結界師
□雨、襲来。
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「え?ちょ、ちょっと良守!」
あ、この声は。
「時音?」
パシャパシャと音をたてながら時音が良守のところに来た。
え、なんで?
「人が行こうとしている時にそのまま飛び出すんじゃない!」
「……って言われても……」
俺何か悪いことしたか?と疑問が頭を巡る。
「閃君が来て良守が傘無いって困ってるから傘貸してやれよ、って言われたから追いかけてきたのよ」
影宮。さっきは心の中で文句言ってごめん!訂正する。お前はいい奴だ!
……ちょっと待て。
傘を貸すってことはもしかしてもしかしてもしかして……!!
「なぜか知らないけどあの子、あたしが傘を学校に置いているって知ってたのよね。あたしは一応折り畳み傘も持ってたから、こっち貸してあげる」
あー……そっちか。変な期待すんな俺。うあー泣きたい。相合い傘とか考えてんじゃねーよ。うあぁぁぁ……
「ありがとう時音」
でも傘を貸して貰えることはとてもありがたい。この間にもう良守はずぶ濡れだった。差し出された折り畳み傘を受け取る。傘を広げて雨を遮った。
「あんたびしょ濡れじゃない。ホント後先考えないわよね」
そう言って時音が鞄からタオルを出すとそれを良守の頭にかけた。片手でごしごしと頭を拭う。
「じゃああたしはまどかと帰る約束してるから帰るね。気を付けて帰りなよ」
「お、おう」
気を付けて帰る以前に……このタオル時音の匂いがする……え、どうしよう。いい匂いとか思っている俺どうしよう。変態みたいじゃね!?貸して貰ったタオルの匂いで動揺してるって!?
とりあえず帰ろうと気持ちを落ち着かせて今度こそ家路を辿った。