マギ
□幼少の思い出
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「おい、お前トンネルってどこに掘ってるんだよ」
いつものように仲間を連れてはしゃぎまわっている子供たち。そして子供たちが一人の少年に目を向けブーイングする。
「ずっりーよ!」
「俺にもトンネルどこにあるか教えろよぉー」
「てかいつ掘ってんだ!」
すると非難されていた少年は自慢げに笑った。
「へっへーんだ!教えないよー!」
また起こるブーイング。
白い旗を持って逃げ回る少年を追いかけ回す少年。
「アリババー!まてこらー!」
「やだねー!カシムー捕まえれるもんなら捕まえてみろー!」
「なんだとー!?」
みんなで笑いながら駆け回った日々。楽しかった。とにかく楽しかった。父親の悪態のことなんかそのときは忘れていられた。
ある時気づくとカシムはアリババの家族になっていた。
「おいでアリババ、カシム、マリアム」
言われた通りアリババとカシムとマリアムがアリババの母親に寄っていくと抱き締められた。
「いい子ね三人とも。今日はなにして遊んだの?」
アリババが元気に答える。楽しかった!と言うと、そうか良かったね!と返ってくる。そんな光景を見てカシムは胸が痛む。
俺はここに居ていいのか?こんな歳で親父を殺してしまった俺が、汚い俺がこの家族に入れてもらっていいのか?
マリアムはここに居ても大丈夫だ。汚れなく純粋な妹。自分の手で父親を殺めてしまった血濡れな自分。まだ幼いカシムは心の中で葛藤を繰り返す。
二ヶ月アリババの家で住んでいたカシムは耐えられなくなって家出をしてしまった。