届いてほしい願い
□悶えと優しさ
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『?どうした?良守』
「んな、なんでもねーよ……」
帰ってきた良守はかなり挙動不審だった。
。妙に顔も赤い。良守に何があったかは大体わかった。
『時音さんと何かいいことあったの?』
「……な!?んなことッ、ねーよ!」
うん、良守は分かりやすい人なんだな。私の性分としてはこういうときいじりたいけど、今回はやめておこう。良守は命の恩人だし。
「やっと想いが届いたとかそんなんじゃねえからな!時音とは何もなかったからな!」
……と思ってたけど、まさか自分の口で自ら報告するとは思わなかった。
『……正直なんだなー、良守って』
私がそういうと良守は小さく「あ……」と言った。そして顔の赤さがアップした。そのまましゃがみこみうろたえていた。その行動が面白くて笑いそうになったが、それを笑うのは本人に酷な為なんとか抑えた。
『よかったな、時音さんと付き合えることになって!』
おいおい、煙出そうなくらい真っ赤になってんぞ!大丈夫かこの人……。とりあえず誰にも言って欲しくなさそうな雰囲気を顔面で教えてくれたので、言わないと決心した顔でこちらも答えた。
「うわ……口軽すぎるだろ俺……」
廊下で悶えてもしょうがないので良守の部屋に一旦戻ることになった。部屋に戻ってもまだ時音さんと付き合うことができた喜びと私にうっかり言ってしまった恥ずかしさで頭を抱えている良守。
『そんな恥ずかしがることねえだろ?大丈夫だって』
「って言ってもなー!こっちだって心の準備ってものが……」
『でもそうやって自分の本当の気持ち言えるのすごいと思うんだけどな』
そ、そうか?とこちらを窺っている良守に全力でうん、と言ってやった。良守にとってはうっかりでも本当の気持ちを言えず飛び出してきた私にとっては、そのうっかりが羨ましかった。
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