届いてほしい願い

□何で上手くいかないんだ
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「そうか……守美子がそんなことをしていたのか……何故それを言わないんじゃろうなアイツは」

「アイツが何も言わないことなんてそんなもんいつもと変わらねえ事だろ。それよりもコイツどうする?」

良守に連れられ、入った部屋が良守の爺さん、繁守さんの自室。誰かと聞かれ自分の名前を答えた後、良守が私の事情説明をしてくれた。私が夜行に戻れないまだ言えないことがあるっていうことも。そこに繁守さんは深く追求しなかった。

改めてこの部屋を見ると和って感じがするねえ。毛筆で書かれた「努離意夢」の文字が目に入る。すっげえ当て字だな。上手いけども。

「うむ、別にいいじゃろう。うちは部屋数が多いからいくらでも余っとるが、男しかおらんぞ?いいのか?」

『いえ!全然平気です!それよりもありがとうございます!』

頭を下げる。夜行では圧倒的に男性の方が多いから慣れているってのもあるし、どちらかと言うと女よりも男の方がいい。いや、その変な意味ではなくて自分が単に男っぽさがある故、どうも女とは相性が悪いところがある。

「なら良かったわい。よろしくな奈二乃さん」

『あ、さん付け要らないです。普通に奈二乃って読んでください。』

優しい人たちで良かった。図々しい私を受け入れてくれた。もう一度ありがとうございましたと言って頭を下げる。只、頭領の実家とは思っていなかったのでいつ帰ってくるかはわからないが、その時はバレるだろうな。

「部屋は何処にするのかじゃが……居間の隣が廊下からも入れるしそこで良いか?」

『はい!すみません勝手に来て部屋までいただいて……』

「構わんよ。それよりも守美子がうちに来いって言っておきながら道案内を式神に任せてすまんかったな」

時間もかなりかけて遠くから来てくれたようじゃし、って言ってくれてるけど。すみません、時間がかかったのは私が式神さんを困らせてしまったせいです。良守のお母さん守美子さんという名前なんだな。恩人さんの名前だ。絶対忘れるか。

『いえ、守美子さんは私の恩人さんですから本当に感謝しています。ところで守美子さんはどちらに?』

そう聞くと黙ってしまった二人。え?何かヤバイこと言ったっけなぁ?






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