届いてほしい願い

□「あの人」の判明
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「お前名前は?」

さっきのチョコレートケーキの件で上機嫌な良兄に聞かれた。

『柳森奈二乃です』

「柳森か。まあ、まだよろしくってなるかはわかんねえけど、取り敢えずよろしくな!」

よろしくお願いします、と言うとタメでいいと言われた。これで違和感から解放される。一応初対面の人と目上の人には敬語を使う習慣は備わっている。

「俺は墨村良守!好きに呼んでくれ!」

『じゃあ……、良…………あー……でもなあー……どうやって呼べばいい?』

名前で呼ぼうとしたけどなんかしっくりこない。私が名前で呼んでたのはあいつだけだからなー。うーん……どうしよっか……

「結局俺が決めるのかー。ホントに何でもいいんだけど……」

『んー、なら墨村!』

「いや、ちょっと待て!この家全員墨村だぞ!?」

『じゃあ良守君!』

「君付けかー……」

なんだよー結局呼び捨てがいいってことじゃないか。

『んじゃ良守。これでいい?』

「なんかそれの方がしっくりくる」

決定。良守と呼ぶことになりました。

「……一つ聞いてもいいか?」

その前に名前を聞かれたから多分質問2個目になるんじゃないかな。細かいことを気にしつつ承諾する。部屋の外では利守君の友達だと思われる声がお邪魔しましたと言っているのが聞こえた。

「お前何でこれだけ家がある中でこの家を選んだんだ?」

来た。さあ、私の話はどこまで信じてもらえるか。

『これを見たら何かわかる?』

そう言ってから自分の荷物からある紙を出す。式神の紙。真ん中に黒で縁取られている四角。白い紙の上にはその黒い縁の四角形しかない。この様式は知っている。結界師の式神だ。

「これ……」

良守は確認するように式神の紙を手に取る。結界師は烏森を代々護っている術者。正統継承者という跡継ぎ問題でいざこざがある家系。私の知っている人もそういう問題で家を出ている。そして確か結界師の家系は二つしか無かったはず。その二つの家系でしか結界師はいないはずなので、あの人がこの家の出身だということは良守も結界師。多分この式神が誰のかはわかるだろう。

「……おい!これいつ拾ったんだ!?」

しばらく式神を見ていた良守が焦った顔で近づいてきた。その表情は今までとは違い驚いたような信じられないような何かを求めるような顔。





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