届いてほしい願い

□お邪魔します
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「はあぁ!?」

そりゃねえ、驚くでしょうとも。私だってやだよ。自分の家の前で挙動不審な行動している奴に迷惑だからとかいう理由で声かけたらいきなり住ませろって言われるんだから。泊めてくださいではなく住ませろだからな、住ませろ。

さて……どう説明したもんだか。

「お前何考えてんだよ!そんなん出来る訳ねえだ……」

言われてもしょうがないと思って大人しく話を聞こうとしていたが、なぜだか急にこの人の勢いが止まり沈黙襲来。どうしたんだ?そして何故こちらをずっと見ているんだ?

「あんたその格好……」

やっと口を開いたと思えば不思議な一言を発した。格好って言われても普通にパーカーとジーパンなんだけど。一応何日かに一回は少ない手持ちの荷物から着替えを出して着替えてはいたが。と思いながら自分の格好を見る。

………………これはアカンわ。ずっと歩いてきていたから服がかなり派手に汚れている。つまり今の私を一言で言えばみすぼらしい。よくこんな格好で道とか人に聞けたな!まあいいや。過ぎたことは振り返らない……と思いたいところだが、私は結構過去をうじうじ悩んでしまう奴らしく、恥ずかしさで顔が赤くなる。

「取り敢えず中入れ。うちは男所帯だからお前が着れそうなもんないかもしれなーけどいいか?」

おお!許可出た!

『はい!ありがとうございます!』

やったやったと喜びながらもう一度表札を確認する。そこには「墨村」と書かれていた。式神さんから聞いたあの人の名前も墨村だそうだし、教えてもらった住所もここであっている……らしい。

着替えをさせてもらうという理由でなんとか家には入れてもらえた。

「ただいまー」

玄関を開けると誰かがこっちへやって来た。小学生だと思う少年が困った顔で玄関に現れた。

「おかえり良兄!良兄、ちょっと助けて!」

「どうした?」

と、その時にその子がこちらに気づいたようだ。

「良兄、この人誰?」

気になるよな、うん。でもあんなに急いでいた用事が君にはあったんじゃないのかい?私を見ただけで優先順位変わってしまうのかい?まあな、こんな変なボロい奴がいきなりいたらって考えるとその気持ちも分からなくはないが。

「あーやっぱ利守の知り合いでもなかったか。まあ、こいつの事は俺に任せとけ!んで利守はなんかあったのか?」

「うん。今ねガッチョとコンタが来ててね、良兄のケーキが食べたいだの倉そろそろ見させてくれだのって言うこと聞かないんだ。それで……」

「ケーキ作ってくれと?」

へえーこの人ケーキ作れるんだあ、なんか意外。この利守って子も大変だなあ。とっても騒がしい友人がいるようで。でも困ってはいながらも楽しそうなのはよかったね。

「うん……ごめんね帰ってきたところに」

「いいって気にすんな!俺もあいつらのケーキの食いっぷりはすごく好きだ!待ってろ最高のやつを作ってやっから!」

その言葉を聞いて利守って子はパアッと表情を明るくした。いい笑顔じゃないか、うんうん。この良兄って人もいい兄貴だな。そんな兄弟のやり取りを見ていたら不意に声をかけられた。

「何があったかは知らねーが上がれよ」

『あ、はい』

言われるがまま上がらせてもらいそのまま後ろをついていく。





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