届いてほしい願い

□何処なんだろうね
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人が普通は立っていられないところに私は立っている。上空。そう、空気の上に立っている。正確には私の術を使って上空に立っている。景色は最高の眺めだ。いいとこ見つけたなあー、すんごい星綺麗に光ってんじゃん、誰にも邪魔されなくていいなー、ただなぁ……

ここ何処よ?

辺り一面星が輝いているから今は夜。だから星明かりと月明かり以外は墨ぶちまけたみたいだ。地上を見下ろすと広がっているのは田んぼ。どこまでも田んぼ。時々カカシ。夜だから人はいない。しかも民家も少ない。一人ぼっちで空気の上に立っている。やだなぁ……独りはやっぱやだなぁ……下に降りてみようか。でも人いねーし降りたって変わんねーか……ちょっと行動が活発だったね。ここまで何も考えずにホイホイって来れたんだからねぇ。

……いや、一つだけ忘れずにずっと考えていたか……

随分と酷いことを言ったもんだな。あんなんじゃもう嫌われてるかな。あーでも嫌われてないと私が困る。逃げてきたのに、あいつから逃げてきたのにそれでも嫌っていなくてまだ待っていたとしたら。無理無理無理、そんなのあるわけないや。考えるのやめよーぜ、そんなの全然自分らしくねーし、なぁ奈二乃。

とにかく夜だから何処か寝る場所を探さないと。ずっと木の上だとか空き地の中の壊れかけた家だとかそんなんばっかだよなあ。食べるもんもろくに食べてないし。最後に食べたのって一昨日のよくわからんキノコ……だっけ?……よく今日まで生きてこれたな、すげー褒め称えるよ。

できれば久しぶりに何か食べて寝たい。なんて無理にも程がある願望を思いつつ、その日はやっぱり近くにあった木に寄りかかって寝た。

「ここで何やってるの?あなた」

『……んん………へ?』

寝たけど夜中に起こされた。この人誰だ?きれいな顔立ちの大人の女性が私の前に屈んでこっちを見ていた。暗くてよくわからないけど黒い服着ているのかな。着物だろうか。

「あなた小学生でしょ?夜中に何でこんなところで寝ているのかしら」

ほぉー聞かなくても何やってたのかはわかっているじゃないですか。私は寝ていたんですよ。起こさないでいただきたい。でも間違っていることは違うと言わなくては気が済まねえ。

『私こう見えても13です。年齢的には小学生ではありません。まあ小さいですけど』

多分学校行っていたら中学1年……ぐらい……か?いや中2?まあ私には関係の無い世界か。

「あらあらごめんなさいね。でもまだ子供じゃない。家出でもしたの?何があったかは知らないけど早くおうちに帰りなさい。おうちの方心配してるわよ」

心配ねえ。生憎私には心配してくれる……待っていてくれる人がいないんだ。どうでもいいけどとにかく寝させてほしいのだが。

『……帰る……所がないんです』

自分でも驚いたが気付いたらそう言っていた。例え形だけとはしても私の事を心配してくれる人がいたことに心が揺れた。眠い、こんな夜中に起こされて本当はとても眠い。でも、でも……






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