感謝感激

□宮野の日2010
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「そうそう…お姉ちゃんはあの紅茶が大好きだったわね」
「いつも飲んでたな」
「あとは、ロールケーキ」
「苺のやつだろう?」



コーヒーを飲みながら今は亡き人を思い出して、笑い合う…それはきっと大事な事。

思い出す事が、一番の供養になる…昔、誰かがそう言っていた


毎年この時期になると約束もしてないのに、赤井さんと私はこうやってお姉ちゃんの墓地近くのカフェでばったり出会う
注文するのはコーヒー二つと紅茶一つ、あとは苺のロールケーキを三つ…
お姉ちゃんも仲間に入れて二人で少し昔の話をする。

あれが好きだったとか、あの食べ物は昔から嫌いで…とか。
お互いにお姉ちゃんの知らない一面を知ったり、知ってる一面の話に花を咲かせたり…

こんなに沢山の思い出を残してくれたんだと、毎年毎年再認識をするのが、この一日。



「そうだ、志保…君に渡すものがあった」
「何?」
「手を出せ……左だ」
「…え?」
「これを受け取って貰いたい…勿論、そう言う意味でだ」



赤井さんが私の左手…正確には左手の薬指に嵌めたシルバーリング…小さなハートのモチーフには輝くダイヤモンドが一つ。

頭の中が真っ白になって何も考えられない…

そう言う意味って?



「志保、突然すまない…俺と結婚しないか?勿論君が明美の妹だから、と言う理由じゃない…君が好きだから、家族になりたいと思った」
「で、でも、私で…良いの?」
「志保、全部をひっくるめて愛してる…」



全部ひっくるめて?
過去の事もお姉ちゃんの事も全部?

こんな私を愛してるだなんて言ってくれるのは、赤井さんだけ。
私も赤井さんの事は大好き…だから、迷う事なく首を縦に振った。

お姉ちゃんの事も私の事も良く知ってる赤井さんとなら、一緒になれる
こうしてお姉ちゃんの思い出話をしたり、赤井さんの家族の話もしたり…きっと楽しい家庭になるんでしょうね?



「志保…ありがとう。正直言うと、断られるんじゃないかと不安だったんだ」
「断る理由が無いわ…こんなにも私とお姉ちゃんを思ってくれてるんだから…」
「明美より今はお前を愛してるって言ったら、怒るか?」
「そうじゃないと今は困るわ…結婚を申し込まれたのに、私よりお姉ちゃんを愛してるだなんて、酷すぎる」
「違いないな」



二人笑いながらコーヒーを飲んで、今度は将来の話に花を咲かせた。

博士には何て言ってくれる?どんな結婚式したい?子供は何人欲しい?どんな家に住みたい?

貴方に聞きたい事が、また増えた…



「お姉ちゃん、怒るかしら?」
「俺が怒られるな」
「え?」
「志保を泣かせたら容赦しないとな…」
「そうかもね?責任重大よ、赤井さん」
「秀一だ…これから秀一と呼んでくれ」
「〜〜っ///しゅ、秀一、さん///」



お姉ちゃんの呼べなかった名前、代わりに沢山沢山呼んであげる…だから、ずっとずっと見守っててくれる?ずっと愛してくれる?

ねぇ、お姉ちゃん…

私達は今もこれからも、ずっとお姉ちゃんが大好きよ。



「さて、墓参りして帰るか」
「そうね」
「早く帰って博士に挨拶をしないとな」



今日はなんて幸せな一日なのかしら、ねぇお姉ちゃん?















あとがき

間に合った!宮野の日、おめでとうございます!
Re、Timeにも違うのをアップしてますので、よかったらPCの方は見てみて下さいませ☆


20100308


 

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