雲一小説
□バレンタインデー
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2月14日。世間で俗に言う、バレンタインデー。
もともとは昔のヨーロッパで、兵士たちの結婚式を秘密で上げてくれた、バレンタインという名の牧師の誕生日を祝う日。らしい。
そうは言っても、日本では好きな人やお世話になった人にチョコをあげる日として定着している。
正月気分が抜けたと思ったら、食品売り場では早々にラッピングされたチョコが並べられていた。その商人魂には多少、肝を抜かれる。
いや、そんなことはどうでも良い。
俺、細川一休はその日を目前に頭を悩ませていた。
もらえる数が気にかかるわけじゃないっす。そんなこと、男子校に進学すると共に覚悟を決めていた。
俺は今、「もらう」ということでなく、「あげる」ということに悩んでいるのだ。
さっきも言ったようにこの日は、好きな人にチョコをあげる日である。しかし、それは「女性」が「男性」にあげる日だ。「男性」が「男性」にあげるという日としては定着していない。
ま、当たり前なのだが。
ちなみに俺があげようとしている人は、もちろん雲水さん!!
雲水さんのことは、もちろん鬼好きだし、日ごろから鬼お世話になっている。それに実は、俺と雲水さんはそれなりの仲となっているから、俺がバレンタインにチョコとあげたとしても、何の不審も持たずに受け取ってくれるに違いない。
と、はたから見たら何の問題も無いように見えますけど・・・・・。
すいません。チョコが買えません。
店にはこれでもか!と目立つように様々なチョコが山積みになっているというのに、どうしても、その一つを手にとってレジに持っていくことが出来ません!
この時期にレジにチョコを持っていく男なんて・・・。
雲水さんへの愛が本物であれば、そのくらいの恥じはなんともないはず。とか言われると、痛いんすけど・・・・。
けど、そこはやっぱり男のプライドとして・・・それは・・・。
はあ・・・。
もう今となっては、それらしいチョコを買っておいて、14日に渡す。という手も、店も街もテレビもチョコ=バレンタインとなっている今日この頃では使えない。
・・・・・・・・・こうなったら。
バレンタインには必需ネタ(?)、チョコの代わりに俺を喰べて下さい!
って、出来るかぁ!!!!
心の中のちゃぶ台をひっくり返した。
いや、勘違いしてもらっては困る。雲水さんに喰べられるのが嫌というわけでは、断じて無い!雲水さんが望むのなら、この身体をいくらでも差し上げる覚悟は出来ているっす!!
って、何言っちゃってんだ俺・・・。
ただ、「その日」にそういうことをするっていうのが、気にさわるんすよ。
そんなこと言って、気まずい関係になってしまうのも嫌だし、もし、拒否されたり嫌がられたら・・・・・・俺、死ぬ。
と、いうわけで。
俺は何も用意できずに14日を迎えてしまった。