雲一小説

□10年
1ページ/8ページ

今日は二人でちょっと離れた、知らない駅で降りてみた。
「なんかのどかなとこっすね」
「そうだな」
歩いていたら、団地に入っていた。
余計な雑音もなく、たまに主婦や親連れが歩いているくらいで、のんびりとした場所だった。
「でも、いいんすか? せっかくの連休なのに、目的地も無くこんなふらふらして」
一休が雲水を見上げた。
「いいんだ。たまにはお前とのんびり散歩するのも悪くない。それとも、どこか行きたいところでもあったか?」
「いいえ」
「なら、問題ない。今日はうちに泊まっていくだろ?」
「はい!」
二人で歩いていたら、曲がり角の先から子どもの声がした。
「ガハハハハハ! 待てリボーン!!」
てけてけと走っている足音がした。
「鬼ごっこでもしているのだろうな」
「変なあだ名っすけど」
見えていなかったが、休日ののどかな風景らしさに心和ます二人だった。
「うざい」
ドカッ!!
「ぐぴゃ!!」
別の子どもの声の後に、派手な音と共に悲鳴が聞こえた。
「転んだんでしょうか?」
「かもな」
二人は歩き続けた。
「が・ま・ん…う、うわああぁぁぁ!!」
「泣いちゃいましたね」
「大丈夫かな?」
「あーもー。またお前たちは!」
新しく少年の声がした。
「お兄ちゃんが来たっぽいです」
「なら、大丈夫か」
もうすぐ、その角にさしかかる。
「リボーンのバカー!! ちねー!!」
「ああ、ランボ止め…って、何処に向かっ――」
二人が角を曲がったのはその時だった。
ドカアァン!!
「うわあぁっ!!」
「一休!!」
爆音と大量の煙が二人を包んだ。
「最悪――――!! 誰かに当たっちゃったし―――!!」
少年の叫びがしたが、雲水はそれどころではなかった。
「一休! 大丈夫か!? 一休――!?」
一休がまともにくらってしまったのだ。
煙が退くと、人影が見えた。
「一休…」
雲水は安堵のため息をついて、その影に近づいて行った。
が、この人影が自分より背が高いと分かり、違うと思ったが、額にホクロのあるその人物は一休に似ていた。
「…?」
「あれ? 雲水さん縮んだ?」
声も今より少し低かった。
「??」
この背広を腕にかけたワイシャツ姿の大人は、一休に似ていたが、今で隣に居た一休ではなかった。
「す、すいません!!」
先ほどの少年が頭を下げてきた。中学生くらいだ。
「それより…一休は?」
雲水は周りを見回した。
「一休は俺っすよ?」
「…は?」
「すいませんすいません!!!」
状況がつかめていない雲水と、一休と名乗る大人に、少年はひたすら頭を下げていた。
「アホ牛のバズーカがお前の連れに当たったんだ」
塀の上から声がした。
見上げると、黒スーツを着た赤ん坊が座って、雲水たちを見下ろしていた。
「バ、バズーカ!?」
「あー、そっか。今日だったのか。すっかり忘れていた」
雲水はひたすら頭を悩ませていた。一休はどこに行ってしまったのだろう?」
「あ、あの。わかるように説明しますので、家に来てください」
少年が雲水に声をかけてくれた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ