雲一小説

□しゃっくり
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「ひっく・・・ひっ!」

部活の最後のストレッチのときから、一休のしゃっくりが止まらないでいた。

「うるせーな!さっさと止めろよ!」
ゴクウが一休の鼻を摘んだ。
「俺だって、止めたいっすよ〜」
着替えも終わっていたが、皆が一休に集まってきた。
「一休、ほら水」
山伏がボトルを持ってきた。
定番の息を止めて水を飲むという方法を試せということだ。
「ありがとうござっ・・・ます」
一休はさっそくその水を三口ほど一気に飲み込んだ。
そしてボトルから口を離した途端、
「ひっく!」
ダメだった。
かと思ったら、後ろから衝撃が来て、一休は前につんのめった。
「おわっ!」
「どうだ?」
三年生の竜崎だった。
脅かしたつもりらしい。
「痛いっす・・・ひっ!」
叩かれ損で終わった。
「ダメ元だ。息止めろ」
ゴクウがまた一休の鼻を摘んだ。
試してみようと、一休は大きく息を吸って、口を閉じた。
瞬時に、サゴジョーが一休の口を手で塞ぎ、ハッカイに腕を後ろで固定された。
しばらくたった。
「・・・ん、ん――!!!」
一休の肺の限界がきた。
しかし、西遊記トリオは離してくれなかった。
バタバタと足を振り回して、限界を訴えてようやく解放された。
皆が必死に息を吸っている一休に注目した。
「ぜぇ・・・ぜぇひっく!」
皆のため息が部活に響いた。
「他に方法知ってる奴いるか?」
「軽い運動をする」
「さっきまで部活してたんすよ?」
「ご飯を丸呑みする」
「それ、魚の骨が喉に刺さったときっすよ」
「耳を両側から引っ張る」
「なんの根拠もねーな」
「そう思うなら、やらないでください!・・・いたたたたたっ!」
「何やっているんだ?」
監督と話をしていた雲水が、今来た。
「うんす・・・っく、さぁん」
一休は一目散に雲水に両腕を伸ばして駆け寄り、抱きついた。
「どうした?一休」
雲水は子どもが泣き付いてきたかのように、一休の頭を撫でてやった。
「っく!」
雲水の腕の中で、一休の肩が痙攣した。
「まだ、止まってなかったのか?」
「はい」
「いろいろ、やってはみたんだがな」
山伏が雲水に説明した。
「そうですか・・・」
雲水は、自分の胸にぴったり張りついている一休の肩を包むように手を添えた。
「そのうち、止まるとは思うが・・・」
雲水は一休が自分に駆け寄って来たのは、しゃっくりが苦しくて助けを求めて来たのだと思った。
本当は皆にいじられていてそれから逃げて来たのだが。
「雲水、入り口塞ぐなよ」
後ろから声がした。
黛が部室に入ろうとしていたのだ。
「ああ、すまない」
雲水は一休を半ば抱えるようにして、道を開けた。
「ひっ!」
一休の肩がまた痙攣した。
黛も一休のしゃっくりに気が付いた。
「まだやってたのかよ」
しかしそのまま中へ進もうとした。
が、くるりと振り返ると、口を開いた。
「そう言えば雲水、あのこと、もう一休に言ったのか?」
「え?」
「・・・やっぱり、俺から言うか」
黛は一休に近寄り、雲水から離すように自分の方を向かせ、その両肩を掴んだ。
「一休、良く聞くんだ」
黛の真剣な声色に、一休も黙って聞くことにした。
「・・・ひっく!」
しゃっくりは出たが。
黛は一度口を開いたが、言いにくそうに目を反らした。
決心したのか、再び一休に顔を向けた。
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