お話

□3話
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「ん…よし、支度できたし…いこうかな」

最低限の旅支度を終え、家の戸を閉める。今度、ここに帰ってこれるのはいつになるか。いや、もしかしたらもう戻れないかもしれないと、千鶴は前世をそっと思い返す。

「ううん、考えてもしかたないよね。今は今!早く薫を連れ帰るんだから」

くるりと家ーといっても江戸での住まいだーに背を向け千鶴は歩き出した。
千鶴16歳。里の襲撃のあと、前世と同じく綱道に拾われ、ここまで大きくなった。前世との違いといえば、今までのことを忘れていないことだろう。
薫はやはり見つからず、探しに行くのだと暴れた回数数知れず。
散々綱道を困らせた結果、剣術や武道を習いたいと言い、鬼の力の使い方も学んだ千鶴だった。そう、全ては、おそらく南雲家にいるであろう薫を連れ戻し、今度こそ守るため。
もう守られるのは嫌だと強くなった。綱道としては、自分の身を守る程度に…と考えていたのだが、今や千鶴はそこらの侍ーというか新選組幹部にも引けを取らないくらい強くなっていた。この事実に気づいているものは、今現在いない。
さて、前世と同じく京に行ってしまった綱道。今回もまた、便りが途切れてしまっている。
父親でないとわかっている千鶴は、綱道をおじさまとよんではいるが、一応身内。この先の展開がわかっていても心配にはなる。
そして今日、京に向かって出発したのであった。
水色の着物に袴をはき、髪はバッサリと短くして。前世での男装はあまりに女の子らしいと新選組で教わっていた千鶴は薫を意識した姿に変えてみたのだ。まだ、前よりは男らしい…かな?と首をかしげかしげ、京への道を千鶴は歩く。
道中人に絡まれては投げ飛ばし投げ飛ばしを繰り返しながら。

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