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□探し物
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 「旦那にお願いしてみよう」

 そして万事屋への方向へと歩き出した
 歌舞伎町中に枝を張っている男だ
 きっと彼の一言で文句を言いながらも
 従業員の2人も町内を飛び回り
 町民も協力をしてくれるだろう
 だとしたら2,3日くらいで見付かるだろう

 彼は優しい,いやお人好しだ
 困っている人が居れば必ず手を差し伸べる.
 たとえそれが誰であろうと,
 たとえそれが誰と対峙しようと.
 全く…それでいくら傷を負っているのだろう
 少し目を離せば綺麗な白い肌に
 痛々しい傷を作ってくる 
 役人である自分でさえ負わないような程の傷を.
 本当に命がいくつ有っても足りない位だ
 馬鹿だ,一言で言えば
 でもだからこそ彼,坂田銀時に惚れたのだろう
 と思考を巡らせていれば
 彼の営む「万事屋銀ちゃん」の看板が見えてきた
 スナックの上にある事務所には灯りが付いている.
 家の中には居るようだ
 少し安堵したように店の横に有る階段を上る
 ドアに手を掛ければガラリと音を立てて開く
 「また鍵掛けてねェのかあの人は」
 玄関に入れば彼のブーツがあった
 「旦那1人か」
 他に靴らしきものは見付からず
 2人の従業員は出掛けている様子だ
 「おじゃましやーす」
 一言声を掛けては家へと上がり
 いつもの事務所へと足を進める
 「あり?」
 戸を開けて見渡しては人影が無いことに首を傾げる
 肝心の旦那の姿が見当たらない
 台所にでも居るのかと歩き出そうとして
 ソファーへと目を移しては目を見開き固まった.
 
 そこには気持ち良さそうに寝てる銀時が居た
 四肢をだらんとさせ小さく寝息を立てている
 目に沖田のアイマスクを被せたまま

 「何で旦那が持ってんでィ…」
 銀時の目に被さっているアイマスクに手を掛けては
 起こさぬようにアイマスクを外す.
 ふわりと銀色の睫毛が揺れれば起きてしまったかと覗き込むも紅い眼は開かない
 ふぅと息を吐いては安らかに眠る寝顔に
 自然と頬を緩ませる
 そして軽く額へと口付けを落とし
 「旦那ァこいつは返して貰いやすぜ」
 柔らかく笑みを浮かべ頭にアイマスクを引っ掛けては
 カラリとドアを開ける
 乾いた冬の空気が万事屋内に入り込んでくる.
 上機嫌に沖田は万事屋を後にした.




 ―「馬鹿ヤロー…起こせっつーんだよ
   あのクソガキめ」
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