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□探し物
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 ―アイマスクを失くした。

 普通に考えたら何とも無いことだろう.
 でも沖田にとっては一大事だった
 何せあの悪趣味な柄だ
 其処ら辺に売ってる代物ではない.
 所謂特注品というやつだ
 更にあのマスクがないと寝れないときた
 何気安眠効果が有るらしい
 土方をからかうのにも使うが
 実際無いと寝た気にならない.

 いつ失くしたのか
 朝起こしに来た土方をバズーカを撃った時は
 間違いなく頭に掛けていた.
 その後の朝会でもポケットにしっかり入っていた
 市中見廻りで一緒に見廻っていた土方にバズーカを一発お見舞いさせては
 河原で昼寝をした,当然アイマスクを掛けてだ.
 30分程居眠りしていたら旦那がやってきた
 旦那はパチンコで負けたらしく
 いつになく怠そうに声を掛けてきた
 まぁ要するに甘味を奢って欲しいということだった,
 普通に考えたら図々しい奴だと思う
 しかし惚れた弱みというか何というか
 甘味を求める旦那は子供の様に可愛らしい
 いつもはやる気の無く死んだ魚の様な紅い眼がうるうると水気を含んで揺れる.
 そんな目を見たら了承以外の言葉なんて出る筈も無く…
 恋人という仲でもあるのに旦那は手を繋ぐことを恥じらう,から無理矢理手を取って甘味処へと向かった.
 そこでクリームあんみつを頬張る旦那を
 穴が空く程見詰め堪能し勘定を済ませ
 旦那とはその場で別れた.

 思い当たるとしたらそこだ
 きっと財布を出した時におちてしまったのだろう.
 沖田はそう思い立ってすぐに甘味処へと急いだ.

 
 が,無い.
 店員を脅すようにアイマスクが落ちていなかったかと問いただしてみたが怯えるように唇を震わせた店員に
 「お客様の座ったお席を片付けたのは私ですがアイマスクも忘れ物も有りませんでした」
 と言われたら何も言える訳もなく
 大人しく店を後にした.

 歌舞伎町をふらふらとしながら探し
 途中五月蝿いマヨ野郎を蹴散らし
 他の呼びに来たザキや隊士共を
 千切っては投げ千切っては投げ
 町内を探してもアイマスクは見付からず
 日が落ちてしまった.

 1日中探し歩いた沖田は疲れ切り
 若干投げやり諦めていた.
 これはもう仕方が無い,
 あまり考えたくなかったが最後の切り札だ.
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