小説

□夢の中の悪魔
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悪魔の名前は、×××=セバスチャン
夢の中で手紙を貰った。「君をさらっちゃいたいよ。鳥はとても可愛く鳴くんだね。早く会いたいな。」
この手の夢は何度も見た。
悪魔は「私」に恋をしている。
「私」も悪魔に恋をしている。
しかし悪魔と人間の恋は許されることではない。
悪魔に会いたい。
悪魔の仲間が人間界に降りてきたが、セバスチャンは降りてこなかった。
「私」はセバスチャンを2年前から待っている。
夢の中で悪魔の名前を聞いたが、苗字しかわからなかった。
私に教えた偽名は「空 金(そらの かな)」。
悪魔は「夢でしか連絡をとることができない」という。
しかし、一度人間界に降りてきた。夢だったが、悪魔が私の夢に直接入ったという。
その時に私と悪魔は初めてお互いの顔を見た。どちらも良い印象を持った。
が、私はその夢で見た顔を覚えておらず、髪型だけ覚えている。
夢に手紙が届く。(最初に戻る)
返事を書こうとしたところで目が覚める。その日は学校がなかったので、「私」は悪魔に覚えている限りの返事を書こうとした。
「私」は返事に好きだと書きたかった。しかし、これは夢の中ではないのでいけないと思い、「私も貴方にさらってほしいな。早く会いたい。」としたため、机の引き出しにしまいこんだ。
悪魔へ手紙を送る時は、誰にも見られてはいけないという鉄則がある。
が、見られなければどの方法でも悪魔を知る者は手紙を送ることができるので、私はこの引き出しに鍵を掛けた。
後日、夢に悪魔が現れる。
私は驚き、「久しぶりだね」と笑う。
悪魔は照れくさそうに「やっと会えたね」と言った。
そこで私は思い出す。外見、手紙の内容、そして、彼の本名を。
「貴方の名前をやっと思い出したんだ。コバルトだよね。」
「ふふっ、君は忘れやすいんだね。」
「そんなことないよ。貴方なんて、私から見たらまだ12歳だよ?」
「残念でした。実際は17歳だよ。」
「ふうん、童顔なんだね。」
「悪魔はそんなもんだよ。僕は王子だから17年でも自由に行動できるんだ。普通の悪魔だったら1000年生きないと自由に動けない」
「まだ子供なんだね。」
「いいんだ。さあ、君をさらいに来たよ。」
悪魔は微笑むと、私の手を取った。
「願いを叶えてくれるんだね。私は魂を取られちゃうの?」
取られた手を握ると、悪魔は微笑んだまま、「お望みなら」と言った。
「いいの。貴方になら」
「随分と気に入ってくれたんだね。」
「当然だよ。貴方が好きなの」
「うん、知ってたさ。僕も好きだからさらいに来たんだよ。」
「嬉しいな。どこへさらうつもり?」
「どこがいいかな。人間界で言えば、遊園地でも行けばいいのかな?」
私はそれじゃただのデートだよ、と口を尖らせるが、「そのあと一緒に暮らそうよ」と笑った。
「いいね。ここに戻ってこれないほど遠い所がいいな。」
「じゃあ叶えてあげる。僕は独占欲が強いから、誰も近付けないような所に行くけどいいの?」
「うん。貴方の好きなように」
「君の体も何も食べなくても死なないとか、僕をずっと好きになるとか、不老不死とかにしちゃうけど……」
「ずっと一緒にいられるならそれでいいよ。私にはこの場所も体も合っていないんだ」
私がニッコリ笑うと、悪魔は私の額に手を当てた。目を瞑り何か唱えると、手を退けた。
「これでなった。さあ、さらうよ。」
「ありがとう。幸せにしてね。」
「ああ、もちろん」

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