DMC小説(短編)

□Revolve
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☆過去に別のサイトに上げていたダンネロ小説です。
ダンネロ(ヌルい性描写?アリ)ネロくんの勘違いというかトリッシュの意地悪?話。やけに乙女なネロでもOK!ダンテがヘタレでもOK!な方のみ
お楽しみください
↓↓↓






【Revolve】



「…触んな」

あからさまな毒を含んだ辛辣な言葉に、ダンテは伸ばしかけた手を止めて
代わりに背を向ける俺の顔を、肩越しに覗き込んできた
「お?えらくご機嫌ナナメだな、坊や」


『どうした?』と言わんばかりのまるで他人事な表情

それが余計俺を苛立たせるってのをコイツは解ってない…全然


まぁ事務所に戻ってくるなり、すこぶる機嫌の悪い俺がお出迎え
当の本人は、原因が自分だなんて夢にも思わないだろうけどな


俺の頭の中は今
コイツをレッドクィーンで真っ二つにするか
ブルーローズで蜂の巣にするか、はたまた『右腕』で捻り潰してやろうかと

ありとあらゆる処刑方法がシュミレーションされていた


けど、コイツはそう簡単には死なないのを知っている

ならせめて相応のダメージを食らわせてやらなきゃ
俺の気が済まない…


――悪いのはアンタなんだからな、ダンテ


俺はありったけの侮蔑の色に染めた眸で、ダンテを睨み付けると
「その手で、二度と、俺に触んな」
一言一言をこれ以上ないってくらい強調して
そのツラに中指を突き立ててやった
「な…っ、お前、おい…ネロ!?」

訳も解らず面食らうダンテを残し、俺は階段を上がると
自分の部屋に戻るや否や鍵を掛けて閉じ籠った


あのままダンテの顔を見ていたら、きっと我慢なんか出来ない
「……っく、しょう…」
俺は鼻の奥にツン、と刺さるような鈍い痛みを感じながら
止めようもなく溢れ落ちる涙を手の甲で乱暴に拭った





発端は
昼間、ダンテの留守中にフラりとやってきたトリッシュの一言だった


そもそも俺がダンテの事務所に転がりこんでから
『相棒』だったトリッシュは、その役目を俺に半分押し付けるような形で
アッサリと出て行ってしまった…そんな経緯があって

久しぶりに現れた彼女に色々と生活ぶりを訊かれても
俺は嬉々として話せなかった

トリッシュがDevilMayCryを去ったのは俺が無理矢理ここへ入り込んだからだって
頭の何処かで解っていたから

「ダンテとは上手くやってる?」
「…それなりに、は」
何を尋ねてられても曖昧な答えをしてしまう俺は
正直、彼女にどう接していいか迷ってた


――その時だ
じっと観察するような眸でトリッシュは俺を見つめると
ふうん、と何かひとりで納得したように含みのある笑みを浮かべて
こう言った


「貴方、ダンテとシたの?」


一瞬、頭がその意味を理解するのを拒否しかけたが
「―…な、何を、だよ」
めちゃくちゃ声が、上擦ったのを覚えている
ガキじゃないんだからそんな風に訊かれて解らない訳がない

だけど、何でそんな事をトリッシュが訊いてくるんだ!?
顔が馬鹿みたいに熱くなって、マトモに彼女の顔を見れなかった

するとトリッシュはそんな俺の顔を覗き込むようにしながら
追い討ち、を掛けた
「あら、すっかり楽しんでたと思っていたのに…意外ね――彼、凄く意地悪してくるわよ?なかなかイかせてくれないし」
「……………っ」




真っ白、だった
『それ』が何を意味しているか――あからさま過ぎて考える間でもなく
思考はショートして
目の前にノイズが走る

「私もレディも散々泣かされたもの…夜通し、ね――ダンテはまだ誘ってこないの?一度も?」


彼女が嫌に綺麗な微笑を浮かべて並べた言葉は
それ以上、記憶に残っていない
都合の悪いモノを留めておかないのは
人間だけに許された防衛本能だ


彼女が去った後
俺はあまりに現実味のない痛みに
立っている事すら出来なかった
ダンテが愛用している椅子にやっと腰を下ろして
頭を抱え―――胸から込み上げてくる嘔吐感を必死に堪える



ダンテは俺に触れてはきたけれど
そこにトリッシュが匂わせたようなモノは微塵もなかった

何よりショックだったのは
彼女と、レディが
俺の知らないダンテを知っているって事実


傍にいたい、と願った俺の気持ちなんて
所詮ガキの戯言で
最初から通じてなんか無かったんだ…


ひとりではしゃいで
ひとりで傷ついて
馬鹿すぎる







真っ暗な部屋の中
何度もドアの向こうから
ダンテの呼び声が聞こえたけれど
ベッドのシーツに顔を埋めて嗚咽を殺しながら
俺は目玉が溶けちまうんじゃないかってくらい

泣いた






気がつけば
もう随分時間も過ぎて
俺は泣き腫れて開き難くなった目を凝らして
時計を見ようと漸く顔を上げた
「気持ち悪…」

身体が嫌にダルくてたまらない
今すぐ何もする気になれなかったけれど
気持ち悪さだけはどうにかしたくて俺はフラフラな足を奮い立たせ
壁伝いに歩くとドアの近辺にダンテの気配がないか確かめてから
そっと部屋を出た



ソロソロと一階に降りても其所にダンテは居ない
「……」
こんな顔を見られなくて済むなら丁度良い、なんて思いながらバスルームに向かう
普段ならシャワーだけでも良いけれど
今は気の済むまで浸かりたい気分だ

俺はコックを捻って
勢い良く溜まっていく水流を眺めながら
バスタブに寄り掛かって
何度ついても尽きる事がない溜め息をまたひとつ、吐いた



――ダンテは何処へ行ったんだろう?
彼の部屋は主の気配も感じさせなかったし
いつも昼寝をしてる事務所のソファーにもその姿はなかった


「…どうでもいいさ、あんな奴」

口に出せば自分に言い聞かせられると思った
今はダンテの顔を見るだけの余裕なんてないから


少し多目に湯を張った所で、重い体を起こして乱雑に服を脱ぎ
バスタブに体を滑らせて
肩が隠れるくらい浸かる
何度も何度も目を擦ったせいで
水気すらピリピリと肌を刺激した


「……っ、ぅ」
それが情けなくて
悔しくてまた視界が滲んでくる

ただ
もう此所には居られない
って事だけ
やけに冷静に考えられる自分がいた



「全く――坊やは反抗期な上に情緒不安定ってやつか?」
「……何時から其所にいた」
ドアに背を預けて小さく笑みを浮かべるダンテの姿を視界の隅に捉えてから
俺は泣き顔を隠すように俯いた
水面に映る顔は泣き腫れて見るも無惨だ…
「バスルームから妙な泣き声が聴こえてな、一瞬ゴーストかと思ってビビってたとこだ」
「…悪魔でもゴーストが怖いのかよ」
「そんなもんだ」

ダンテの声が近く感じる、と思ったら髪をクシャリと撫でられた
「…泣くな、お前に泣かれると困る」
「俺が泣いたからって――何でアンタが困るんだよ、どうせアンタは俺の事なんてっ……」
思わず口走ってしまった言葉に俺は小さく悪態をついた

――だけどこの際、スッキリしちまった方が楽かもしれない、と
俺は思いきって顔を上げ
ダンテを見据えた
一瞬、俺の顔を見て驚いたダンテの表情は
見る間に切な気なモノに変わっていく


――何でアンタがそんなツラをするんだよ?
「…俺が泣こうが喚こうがアンタにはどうでも良い事なんだろ!」
「どうしてそう思うんだ?いつ、俺が…そんな事を言った?」
「じゃあ何で俺に触れないんだよ!他の奴には簡単に手を出す癖しやがって!…俺はアンタが…」


…あぁ、ダメだ
視界が滲んでマトモに見えやしない
いつからこんな風になっちまったんだろ?
喉だって焼けついてカラカラだ

「アンタが好き、だから…ずっと、触れていて…欲しかった、のに……」
「…ネロ」

視界が暗転する
俺はダンテの胸に抱きすくめられていた
服が濡れ場所から僅かにダンテの肌の温かさを感じる
喉元から肌を伝う手のひらが俺の下顎を掴むと
そのまま顔を上向けられた

優しげなアイスブルーの眸に映る自分の戸惑いを見つけるより早く
「――…ダン…、んっ」
開きかけた唇を強引に塞がれた
あっと言う間に滑りこんだ舌先が口内をなぞる
思わず反射的に瞼を閉じてしまったが
そうする事でより唇に意識が集中してしまう
「ぅん、…ふ、…」
絡めとり、吸い上げて、激しさを増すばかりの口づけに
苦し紛れ薄目を開けば
ダンテもそっと開いたブルーアイズを細めて笑みを浮かべ
上唇を甘噛みしてくる

それだけで、身体中が総毛立ち
背中を走る甘い痺れが全身を伝う
「――…ふ、ぁ…」
漸く唇が解放された途端に酷く間の抜けた声を漏らしてしまった
ダンテはクスリ、と笑うと額をコツンと合わせて
意識も朦朧な俺に囁いた
「…もう、『触れる』だけじゃ終わらないぞ?悪いが我慢も限界、だ」
「が…、我慢…?」
「こんなに余裕が無いとは自分でも呆れるけどな……泣くなよ坊や…優しく出来そうにない」

鼓膜を僅か震わせるその声にさえ
俺の意識は焼き切れてしまいそうだった








*******

「…暇潰しのイタズラにしては度が過ぎたな、トリッシュ」
愛用の椅子に腰掛けて雑誌を捲るダンテの前で
トリッシュは悪びれもせず微笑んだ
「…私はまだシてないの?って訊いただけよ…コレをね」
そう言う彼女の指にはトランプのカードが挟まっていた
「貴方とトランプゲームすると意地悪な手ばかり使ってくるし、なかなか勝たせてくれないじゃない?
私とレディが一晩中勝負を挑んでも勝てないなんて…泣かせてくれるわよね」

ダンテは雑誌を放り投げてトリッシュからトランプを奪った
「わざと坊やが勘違いするような言い方をしただろ…?」
「だってまだ一線を越えられないって顔してたんですもの…お互い我慢してた癖に」
「余計なお世話だ、俺は大事なものはとことん大切にする主義でね」
「の、割には起きて来れないみたいね…坊やは」

トリッシュが二階に続く階段を見上げる
「あー、まぁ…ちょっと、な…って、それとこれとは別問題だ!」
「良いじゃない、晴れて相思相愛になれたんだから――…人助けも気持ちが良いものね」
「それを世間じゃ『お節介』って言うんだ…トリッシュ」

脱力するダンテを尻目にトリッシュはまたトランプを奪い返すと
憎たらしいほど綺麗な笑みを浮かべてウィンクした


「今度は貴方が泣く番よ」





〜fin

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