しょーとなゆめ

□いつもの様に…
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※このお話は現代に近いです。



それはまだルッチがウォーターセブンに行く前のお話。



ルッチ19歳



ルッチはある島である任務を受けていた
それは会社の社員に成りすまし、社長の情報を収集するというものだった。ルッチは新入社員で通り、毎日会社に勤務していた


ルッチはいつも通り会社に行く為に朝起きる、任務の為ルッチは一人暮らし用のアパートに住んでいた


ル「…」


ルッチはささっと会社用のスーツに着替える


《次のニュースです、昨夜~駅で飛び降り自殺がありました、自殺者は~高校に通う3年生で…》


いつもの様に次々とテレビのニュースが流れていく


ル「…物騒なもんだ」


ニュースをちらりと見やりポツリと言葉が落ちる
そして再びスーツに着替える手を動かした
窒素な朝食を済まし鞄を片手にドアに向かう



パタン…ガチャン



ドアを閉めて鍵をかける
そして会社に行く為の駅に向かう



プルルルルルル



《白線に電車が参ります…》



電車が来る合図だ、ルッチはホームに近付く



プーっガタタン、ガタタン…



電車が着き、扉が開き電車に乗り込む
通勤時間と言ってもルッチの通う会社はルッチのアパートからは大分遠いため電車に乗る時間も早くしないといけない、だから今は朝と言っても大分早いので電車に乗る人は殆んど居ない


ル「…」


いつもの様に1時間程の乗車時間の使い道に困る
何をすることも無い、だからといって寝るわけにも行かない、降りる駅を寝過ごすはめにもなるかもしれない


そんな事を考えながらルッチは自分以外の周りの乗客を探してみる


ル「…」


自分の座る座席の列の2人分空けた位の所に1人の女が座っている
今までその女の気配に気づけなかったことに驚く
自分がこれ程までにも瞬時に気づけないなんて…と、その女をまじまじと見やる


『あの…わたし…何かしました?』


すると女は此方の視線に気が付きおずおずと尋ねて来た


ル「…いや、悪い、何でも無い」


『そうですか…』


女はそう言うとまた前へ向き直った
女が前へ向き直ったのを見計りまた女を見てみる
栗色の柔らかそうな髪を腰まで下ろしていて学校の制服とやらを着ている。膝上まであるスカートから透き通るように白い脚をスラリと出していた。顔は横顔からしか認識できないが綺麗よりかは可愛いと言えるような顔立ちをしていた。歳は17、8と言った所だろうか。


『…あの、ほんとにわたし何かしました…?』


ル「…いや、すまない、お前は何もしていない…」


『あ、それなら良かった…』


暫くの沈黙が流れる、それを最初に破ったのは意外にもルッチの方であった


ル「…お前、こんな朝早くに学校とやらに行くのか…?」


ルッチはさっきから自分の中の素朴な疑問を聞いてみた


『…え、あ、はい。本当はもっと遅くても学校間に合うんですけど…家に居たくないので早くに出るんです…』


ル「…そうなのか、親と喧嘩でもしたのか?」


『…うーん、喧嘩‥ではないんですけど…親がわたしのこと嫌いって言うか‥何て言うか…ああ、すいません!こんな重い話して!』


女はそう言って此方に向かってペコペコ謝りだした


ル「いや、俺から話し掛けたんだ、謝るな」


『あ、ありがとう…』


ル「…」


また暫くの沈黙が流れる


『…あの、その…』


ル「…?」


『…優しいん‥ですね』


ル「!!…オレは、優しくなんて無い」


『…そんな事‥ないですよ…わたしにとってあなたは優しいんです…』


ル「…」


それから2人は一言も話すこともなく電車に乗り込む人が増えて来た
そしてルッチの1時間程の乗車時間もそろそろ終わろうとしていた


ル「…」


ルッチは無言で席を立つ


『…次で降りるんですね』


女はルッチに問い掛ける


ル「ああ」


『…明日も‥ここに来ていいですか?』


ル「お前が決めることだ、好きにしろ」


『…じゃあ明日もこの車両に居ますね!』


ル「…」


ホームに着き扉が開く、ルッチは電車を降りようとする


『お名前!なんて言うんですか!?』


ルッチはその問掛けに少し驚く


ル「…ルッチだ」


『ルッチさん…』


女はそう言うとふわりと笑った


ルッチは電車を降りる


変な女だ…と心の中でそう思う
別に相手にする事もないがこの街の人間に親しむことも大切だ、と自分にそう言い聞かせて会社に向かう




*****




今日の勤務も終わり帰るため駅に向かう
今の時刻は7時くらいだ、今朝の事を思い出し流石に帰る時も遭遇する事は無いだろうと駅へと向かう足を速めた


電車が着きいつものものと同じ車両に乗り込む
今朝とは違ってラッシュ時なので満員と言っていいほどに人が居る。これでは今朝の女が居るかもわからない
まあ、俺には関係のない事なんだが…そんな事を思いながら周りを見渡す
やはり小さな女一人をこの満員電車から見つけ出すのは無理だ


『ルッチさん…?』


ふとあの女の声が聞こえたような気がした
声が聞こえてきた方の周りを見渡す


ル「…お前」


するとぎゅうぎゅう詰めの人だかりの中から小さな女が出て来た


『えへへ、また会えましたね』


女はまたヘラヘラと笑った


ル「…なぜオレがここに居るとわかった」


『あ、ルッチさんの黒いシルクハットが見えて‥それで』


ル「…そうか」


女はおやじ達に押されて扉側に押し潰されそうになる


『わわっ』


女は必死に押し潰されるのを阻止しようとする


ル「ハァ…」


それを見ていられなくて女の盾になる様に自分が前に立つ


女はオレを下から覗き込むように見ると『ありがとう』と言って頬を染めた


1時間程の乗車時間も長いのか短のいかもう少しで終わる。ラッシュ時もそろそろ終わりを迎え人も殆ど居なくなる


ルッチと女は人が少なくなったので座席に座る


『…ルッチさん、そろそろ降りますか?』


女は寂しそうな顔でオレに聞いてきた


ル「ああ…」


何なんだこの女は、妙にオレに突っかかる


今朝電車に乗った駅に着く
ルッチは扉が開いたのを見て電車を降りようとする


『ルッチさん!また明日!五時半発の電車で!』


ル「…」


ルッチは女をちらりと見やると電車を降りた


本当に何なんだ、今日初めてあったっていうのに妙に馴れ馴れしい…でも不思議と悪い気はしないだなんて思ったりもするが気のせいだとその思いを打ち消す


ル「変な奴だ…」
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