*初恋はお兄ちゃん

□初恋はお兄ちゃん
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ずっと好きだったお兄ちゃんとあたしは、この日想いが通じ合った


でも、気になるのは
あたしたちは兄妹ということ



こんなこと、許される訳がない




















「佐介、愛理、話がある」


家に帰ると、お父さんに呼ばれたあたしたち



胸騒ぎがする…







お兄ちゃんは、いつもと変わらない表情をしていた




お父さんは俯き、お母さんは肩を震わせていた




なに…?
一体何の話し?






「佐介と愛理は、お父さんとお母さんの子供ではない」







頭が殴られたような衝撃






お父さんとお母さんの子供ではない…





それって…






「そして、佐介と愛理にも血の繋がりはない…君たちは、兄妹ではない…」






あたしは、お父さんともお母さんとも、お兄ちゃんとも血が繋がっていない…?






そんな…





「しかし佐介には、双子の兄がいる…」
「えっ…!?」






お兄ちゃんには双子の兄がいる


じゃあ、あたしは…?




「佐介の兄は…藤崎佑助」
「…藤崎…」
「…ボッスン?」







初めてボッスンに会った時、お兄ちゃんに似ていると思った





それは、双子の兄だから…






「佐介が生まれた日、佐介の両親は別の場所で事故に遭い…亡くなった」
「…」





両親とも、亡くなった





「その時、佐介と佑助君を取り出したのが、私だ…」






お兄ちゃんは、表情を変えず
ただお父さんの話しを黙って聞いていた






「すまなかった…、君たちを離ればなれにさせてしまって!」





お父さんは、泣いていた





「父さんは、僕が息子でよかったですか…?」
「もちろんだ…」
「母さんは…?」
「私もよ、佐介…!」




お母さんも泣いていた






「待って…あたしは…?あたしは…?」
「愛理は…11月11日、つまり佐介と佑助君が生まれた日、私の家の前に捨てられていた」






捨てられていた
捨てられていた
ステラレテイタ…







あたしは、必要のない人間だったんだ…
















「16年前、家の前に“名前は愛理です”と書かれていた紙と共に愛理がいた」



あたしの母親は、さぞかしあたしが嫌いだったんだろうな…




「私たちは、愛理と佐介を双子として育てることにした」





…もう、いいよお父さん





「あたし…捨てられたんだ…」
「違う愛理、私たちは嬉しかった!子に恵まれなかった私たちにとって、佐介と愛理はかけがえのない息子と娘だ!」
「そんなの嘘!あたしはお兄ちゃんみたいにいい子じゃない!頭も良くないし、いつもお母さんとお父さんに迷惑かけてる邪魔者でしょ!?」





涙が…止まらなかった





「そんなあたしなんか、娘なんかじゃないでしょ!?他人なんだもん!あたしなんかいなかった方が、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも幸せだったはずだよ!!」




バチッ!






あたしの右頬に、鋭い痛み




お兄ちゃんが、あたしの頬を叩いたのだ




「愚か者!!!!!」
「…お兄ちゃん…」




今まで、こんなに怒ったお兄ちゃんを見たことがなかった



「何も分かっていない!!愛理、父さんと母さんがどれだけ僕らを大切に育ててくれた!?忘れたのか!」



忘れてなんかない…



この16年間、あたしはお父さんとお母さん、お兄ちゃんからの愛情を注がれ、大切に育てられた




「…っ…」




視界が、涙でぼやける




「血の繋がりがなんだ!僕らは家族だ!父さんと母さんと僕と愛理がいて家族だ!違うか!」



あたしたちは家族…
お父さんはお父さん
お母さんはお母さん
お兄ちゃんはお兄ちゃん


そんなの変わるわけない…!!






愛理は1人じゃない
僕らの家族だ…




お兄ちゃんが優しく微笑んでくれた





「…っ…ご…めん…なさい……ごめんなさい!!…わあぁぁ…!!」
「愛理!!」
「すまなかった愛理…」



お母さんとお父さんがあたしを抱きしめてくれた


















あたしは…
1人じゃない…









みんなで泣いて、抱き合って笑う



そんなあたしの家族




大好きな、あたしの家族…
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