*初恋はお兄ちゃん

□初恋はお兄ちゃん
1ページ/4ページ





――――生徒会室




「すいません、お兄ちゃんいますか?」
「おっ、椿の妹の…」
「愛理です、いつもお世話になってます」


ぺこりとお辞儀をするあたし



「かっかっか、真面目なだな〜椿そっくりだ」




安形先輩は、いつもあたしを椿そっくりって言ってくれる



周りからは言われないので、少し嬉しい




「おいデージー、椿はどこだ?」
「椿くん?見てないが」
「ミチルは?」
「オレも」
「ミモリンは?」
「私も見てませんわ」
「おかしいな…しゃあねぇ、俺探してくるわ」




イスから立ち上がって、あたしに近づく安形先輩



「えっ、いいんですか?」
「まぁ、暇だからな」
「すいません」
「かっかっか、気にすんな」


















「しっかしいねぇなぁ、椿のやつ」
「ほんとですね…」



いつものお兄ちゃんなら、会議に遅れる訳ないのに




「…なぁ愛理」
「はい」
「最近、スケット団と仲がいいんだってな」
「…仲がいいというか、まぁ…部室に遊びにはいきますけど」
「椿、心配してたぜ?愛理は大丈夫だろうか…って」





お兄ちゃんの真似をする安形先輩



お兄ちゃん、あたしのこと心配してくれてるんだ…




「まぁ、あんま心配かけんなよ?」
「はい」





安形先輩がニカッと笑う



あたしもつられて笑顔になる


















「あかんて!」
「落ち着け椿!」


スケット団の部室の前を通ると、なにやら騒がしい




ガララララッ!



「僕は生徒の見本となる生徒会だ!貴様らの助けなど必要ない!」
「お兄ちゃん!」
「椿!なにやってんだ?」
「その声は、愛理と会長!?」





スケット団の部室から出てきたのは、お兄ちゃんだった















「かっかっか、コンタクト落とすなんてお前も抜けてるなぁ」
「すいません、これからは気をつけます」



どうやらお兄ちゃんは、コンタクト落としたらしい



「コンタクト落としたなら、なにも見えないんじゃない?」
「そうなんだ、さっきオレのことをカニに見えるって言いやがった」


お兄ちゃんみたいに、ボッスンの頭からプンプン煙が出ていた



「ごめんねボッスン、お兄ちゃんが迷惑かけて」


妹として申し訳ない


「愛理は何も悪くないで、気にせんでええよ」
「ありがとうヒメコちゃん」


優しいヒメコちゃん




「椿、今日は会議無しだ」
「えぇ!?そんな、僕の責任ですか?」
「ひとまず明るいうちに愛理と帰れ、会議は俺がやっとく」
「…そんな、会長!」
「これは会長命令だ、分かったか?」
「…わ、分かりました」



安形先輩の気迫に、さすがのお兄ちゃんも負けたみたい





「愛理、帰ろう」



しゅんとしたお兄ちゃんは、諦めてとぼとぼ歩き始めた



「うん」



あたしはお兄ちゃんを追いかける



「椿のこと、頼んだぜ」



安形先輩があたしだけに聞こえる声で呟く



「…はい」
「それに、手繋いで引っ張って帰れるぜ?」


ニヤリと笑う安形先輩



かぁぁっと顔が赤くなる



「…っ、安形先輩!」
「かーっかっかっか!!」





口を開けて笑う安形先輩は、片手をあげて去っていった







安形先輩は、あたしの気持ち…




分かってるのかな?














「お兄ちゃん、そっち危ない!」
「ぼ、僕だって見えている!」



お兄ちゃんは、学校に出て100mで早くも5回も電柱にぶつかりそうになっている




その度にあたしはお兄ちゃんの手を引っ張る




お兄ちゃんは、顔を真っ赤にしてすぐあたしの手を離す





「熱でもあるの?お兄ちゃん」



ぴたっと、お兄ちゃんのおでこを触る



熱はないみたい…




「っ!な、ないぞ!!やめるんだ!」



なんでそんなに慌てるんだろう?





「また危ない!」
「くそっ…」



またお兄ちゃんの手を繋いで引っ張る





「クス、かわいいあそこのカップル」
「ほんとだ、2人して手を繋いで顔が真っ赤だ」




そんな声が周りから聞こえた





あたし顔が赤いの!?
お兄ちゃんだけじゃなくて!?
というかカップル!?




1人で混乱するあたし





そんなあたしの横にいるお兄ちゃんは







「本当に僕たちは似ていないんだな…」





あたしには気づかない、消え入る声で独り言をつぶやいていた
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ