*virgin killer & if

□virgin killer
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「…エレン?」
「…ユリアさん、なんで…」




エレンは顔を歪ませていた




「…泣いてるんですか?」




あたしの目から、涙が溢れていたのだ



「…し、幸せすぎて…」


ありきたりな答えを言ってしまった



「…ユリアさんって、嘘つくの下手ですよね…」



そう言いながらエレンは、あたしに着ていたジャケットを掛ける


そして、悲しそうな顔をしていた



「…エレン!」


あたしは離れていくエレンの腕を掴んだ



「…俺が部屋に戻ってくるまでに、着替えて下さい」



あたしの腕を離され、エレンは部屋から出て行った




バタン…




ドアが閉まった音が、部屋に響き、沈黙が訪れた





…あたし、エレンを傷つけた…



いつもあたしだけを見ていてくれたエレンを


いつもあたしだけを愛してくれたエレンを




あたしは傷つけた




「…エレン…」




あたしは静かに涙を流した


































―――――――――壁外調査当日


隣にいるエレンとは気まずいままだった


「兵長、あたしが守ってあげます!」
「んなのいらねぇ」



そして、あたしとエレンの前には、ティアと兵長




仲良そうな2人



思わず、目を逸らした




「前進!」



そして、団長の掛け声で壁外調査は始まった




「行くよ、リリー」
「ヒヒーン」



愛馬のリリーと走り出した














――――――――――

開始から1時間


今のところ、目立った異常はないみたいだった



「…」
「…」




エレンとの沈黙が気まずい




「エレン…」
「…っ…」
「この間は、ごめんなさい…」
「いや…その」
「傷つけた…よね…」
「…平気です!俺はユリアさんのこと、信じてますから!」
「…ありがとう」





エレンは優しく、微笑んでくれた





「…っ!ユリアさん、あれ!」

するとエレンは、左翼側を指差した


「…黒の煙弾…!」




黒の煙弾が撃たれたのだ




「…エレン、煙弾撃って」
「はい!」





バシュンッ!




エレンが煙弾を撃ったのを確認したあたしは、煙弾が撃たれた方を見つめる




あっちはユダがいる…


大丈夫かな…




「エレン、あたし左翼側に行ってくる!」
「…ユリアさん!」




あたしは、我慢が出来ずに走り出した








…ユダ…




嫌な予感がする…





ユダ!!






左翼側に近づくにつれて、人が倒れているのを見かける




「…ッ…」




…ユダっ




あたしは馬を走らせた























――――――――――――――



「…ユダ」





あたしは、血だらけの彼を抱く



「…姉ちゃ…ん…」
「ユダ!!!!!」


彼は、巨人に食われそうになっていた


なんとか巨人を倒して助けたが、お腹の出血が止まらない




「…自分に、素直…になって…」
「もう喋らないで…!!!!」


あたしは着ているもので、ユダの出血部分に当てる



「…エルドさんと…俺の…た………」
「ユダ!?…ユダッ!!!!!!!!」



ユダは、静かに目を閉じた




《…幸せに…なって…》




小さな声だったけど、はっきりと聞こえた



幸せになって、と




ユダ…



ユダ…!




目を覚まして…
まだ母さんと父さんのとこには行かないで…




あたしを1人にしないで…



ユダ…!




「嫌あぁぁぁぁ!!!!!!!」









あたしは、冷たくなった弟を抱きしめて泣いた





また1人、大切な人を失った












――――――――……………



「…はぁっ…、はぁっ…」
「甘いね、ユダ」
「ね…姉ちゃんが…、早すぎんだよ…」




調査兵団に入った時、ユダに立体起動を教えていた時だった





「ちぇ、まだ姉ちゃんには適わねぇや…」
「すぐあたしなんか越えれるよ」



ふてくされるように座るユダ




その隣に腰を下ろすあたし





「…姉ちゃんは、死ぬの怖くねぇの…?」




死ぬのは怖いよ…



そう言えば



「だよな」



なんて笑うユダ



そして、真剣な目をした


「…巨人に食われた奴らを見てから、俺はいつ死ぬんだって思うんだ」
「…ユダ」
「…死ぬなら、姉ちゃんに見守られて死にたいな…」



無理して笑うユダ



あたしは、力を込めて言う


「死なせない…」
「…姉ちゃん」
「ユダは、あたしが守る」



あたしとユダは見つめあった


「…じ、冗談だって、俺はそんなシスコンじゃねーし!」


ユダは目を逸らして、笑った



「なっ、昔は姉ちゃん、姉ちゃんってついて回ったくせに!」


あたしはポカッとユダの頭を叩く


「うわ!怒んなって姉ちゃん!」
「うるさい!バカユダ!!」



















あたしは、ユダの笑った顔を思い出していた





「ユダ…」










涙がユダの顔にこぼれ落ちた
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