銀の記憶

□物語の始まりへ
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これを、夢だと理解したのはいつの頃だったろう。顔が見えない目の前の人が泣いている。
『大丈夫だよ』と声をかけたいのに、声が出ない。泣かないでと頬の涙を拭ってあげたいのに手が、腕が動かない。それが、どうしようもなくもどかしかった。今日もいつものように暗闇に飲み込まれるのだろうと目を閉じようとしたその時

「思い出せよ」

と声が聞こえ、目を見開いた。

ふわふわの銀髪の彼はこちらを見てしっかりと声に出した

「思い出せよ!さやか!」

『銀時』

明るい光に包まれ目を覚ますと、見慣れている自分の部屋の天井。さっきまで、とても大事な夢を見ていた気がするのに思い出せない。

顔を洗うため洗面所に向かい鏡と向き合う

『一体、あんたは誰なのよ』

それは、夢に出てくる人物に言っているのか、自分に言っているのか、両方なのか・・・多分後者かな、なんて

あたしには記憶がない。正確には、6年前までの記憶がすっぽり抜けてしまっている。覚えているのは、ひどい怪我を負って病院のベッドで寝ていたということ。なぜ怪我を負ってしまったかは覚えていない。話によると海岸で倒れていた所を、真選組に保護されたらしい。

真選組の皆は、こんな見知らぬ相手に、治療費から何から何までしてくれて、良くお見舞いにも来てくれて、あたしの気持ちが少しでも明るくなるように面白い話聞かせてくれたり、まぁ後半誰が面白いかで喧嘩になったり、いきなり裸踊りし始めた時にはさすがにビックリしたな。そのあと決まって、看護婦さんが「うるせー!ここは病院なんだよ!静かにしろ!!」皆を叱ってたっけ、思い出したら笑えてくる。

あれから3年―――

未だに記憶は戻らないけど、今は恩返しも含めて真選組で働いている

『そういえば、明日からだっけ江戸に戻るの。楽しみだなぁ、皆元気にしてるかな?』




さぁ今一度止まった時を動かしましょう。それが闇に続く道なのか、または光への道なのか


 

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