ミスミソウ

□第十三話
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私は、今までの出来事を全て剣城くんに話した。
お母さんの事、お父さんの事、そして理乃ちゃんの事。
剣城くんは優しく最期まで口を挟まず聞いてくれた。
時折撫でてくれる手はとても温かかった。




「ずっと…、一人だったのか?」

「うん…」




そう、私はずっと一人だった…、はず。
あれ?私はずっと一人だったっけ?
誰かが側に居たはず?
あれ?よくわかんない。
なんだかまるで私の記憶が無いかのように何かが突っかかっている。


「よくわからない…の。
誰かが側に居たかもしれないし、誰も居なかったのかもしれない、私の中では誰も居なかったはずなのになんだか突っかかっているの」


そう、何かが突っかかっていて思い出せない。
まるで思い出したくないと叫んでいるような…。

自問自答をしていた、そんな時剣城くんが…



「多分お前はさ、学校でのいじめで記憶がこんがらがっているだけだ。
無理に考えなくていい、思い出さなくていい」



そう言って私の頭を撫でる手は優しくて温かくて涙が出そうなぐらいに嬉しかった。
なんだかこれ以上無い幸せが私に押し寄せてくる。


「みんなの誤解を解くか」

「そんな事、出来るの?」



「サッカー部の仲間なら誤解を解くことは出来るかもしれない、でも他の奴等は…」

「私はそんなに欲張りじゃ無いから大丈夫…、みんなの誤解を解きたい訳じゃないの。
ただ私は、理乃ちゃんと仲良くなってお母さんとお父さんと一緒に暮らしたいだけなの」


途端にふわりとしたものに私の体は包まれた。
それが剣城くんに抱き締められてると知るまであと五秒。
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