薔薇
□【めーさく】メイド服
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「咲夜さんはメイド服を着るべきだと思います。」
美鈴はメイド服を持ったまま咲夜にそう言った。
青い生地のエプロンが付いたミニスカートのメイド服を掲げた笑顔の男。
咲夜は何も言わずその男にナイフを投げた。
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「何でメイド服なんだ。」
咲夜は額にナイフが刺さっている美鈴に言った。
彼はナイフが刺さってるというのに笑顔だ。
「ですから、メイド妖精を従えている者として、メイド妖精の気持ちになる事は大切だと思うんです。」
「何でメイド服なんだ。」
「ですから、メイド服を着ることにより、メイド妖精と同じ立場になってメイド妖精の内情を理解してこそ、真にメイド妖精を従えられると思うんです。」
「何でメイド服なんだ。」
「ですから、美脚の咲夜さんにはミニスカートのメイド服が似合うと思うんです。」
咲夜はナイフを構える。
美鈴は焦る。
「いや、下着は男性用で構わないですから」
咲夜は無言でナイフを投げた。
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「そんなにメイド服が好きなら自分で着ればいいだろ。」
咲夜はメイド服を抱え、しゅんと落ち込んでいる美鈴に言った。
彼の額には2本のナイフが刺さっている。
因みに2本目は1本目よりも深く刺さっている。
「俺が好きなのは咲夜さんです。ですから、咲夜さんに着て欲しいんです。」
男相手に好きだと言える美鈴に呆れながら、咲夜は美鈴の額のナイフを引っこ抜いた。
これは優しさではなく、ただのナイフの回収だ。ナイフは安くはない。
「俺には女装の趣味も男色の趣味もない。」
咲夜が冷たく言い放つと、美鈴は悲しそうにメイド服を畳んだ。
「せっかく咲夜さんにピッタリのサイズにしたのに。」
咲夜は美鈴を睨んだ。
「なんでお前が俺のサイズを知ってるんだ。」
メイド服を畳む美鈴の手が止まる。
頬には汗が流れた。
「あの、寝てる間に...」
「寝てる間に?」
美鈴は焦って、あわあわと両手を振った。
「あ、いや、サイズを測るために体は色々触りましたけど、それ以上の事はしてませんよ! まだ、手は出してません!」
咲夜は先程引き抜いたナイフを美鈴の脳天に突き刺した。
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咲夜は美鈴から回収したメイド服のやり場に困っていた。
流石にこのサイズではメイド妖精用には出来ない。
美鈴に問い質した所、このメイド服の生産源は七色の人形使いだった。
どうやら、新入りのメイド妖精が背がとても高いので特注で作って欲しいと頼んだらしい。
メイド服は咲夜にピッタリのサイズだという言葉が本当だとすれば身長、180近いメイド妖精用という事になる。
これを信じてしまう人形使いも人形使いだが。
後で、直に会って謝っておこう。
そうだ、そのついでにこのメイド服のサイズも作り替えてもらおう。
メイド服の行き場が決まって安堵していると、不意に美鈴の言葉を思い出した。
美脚。
美鈴はそう言った。
そういえば、いつもズボンの自分に何故、美脚という判断が出来たのか。
寝ている時か。
それとも風呂の時か。
どちらにしろ、これは美鈴に問い質すとしよう。
妖怪にナイフは効かない。
しかし、体術は効くはずだ。
美鈴が見たいとほざいていたこの足で蹴ってやろう。
咲夜は脚力には自身があった。