百合

□【マリアリ】カカオ50%
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「これ、食えるのか・・・?」

魔理沙は鍋に入っているチョコレート(?)を覗き込んだ。
チョコレートは以前より黒くなり、鍋にこびりついている。

「これはチョコというよりかは・・・炭?」

そして魔理沙はチョコレート(炭)の入った鍋を流し台に放り投げた。
ガコン と鈍い音がした。

「おかしいな、確かにチョコを溶かして固めるだけの簡単な作業なのに・・・」

魔理沙は板チョコのパッケージを見た。
黒っぽいパッケージには金色の文字が輝いている。

「このチョコが不良品なのか?しかも、なんだよ”明治”って。いつのチョコだよ。」

魔理沙はこのチョコを買った、甘味処の従業員の言葉を思い出した。

「2月14日は”バレンタイン”と言って好きな人にチョコを送る日なんですよ。是非とも一つ買っていきませんか?」

そんな売り文句につい、買ってしまった。

「しかし、買ったものの、これをそのまま渡すんじゃなくて、溶かして、固めて、手作りチョコとして渡さなければならない・・・って、それはどうなんだ?」

甘味処の従業員はそう、言っていた。

「・・・。」

魔理沙は流し台の炭(チョコレート)を見た。

(誰かに、作り方を教えてもらわないとな・・・)



*******************


「で、私のところに来たのね。」

咲夜は持っているボールの中身を混ぜながら話した。

「ああ、頼む。教えてくれ。」

魔理沙は軽く咲夜に頭を下げた。
紅魔館の台所はチョコの香りで満たされている。

「私じゃなくても、アリスに頼めばいいじゃない。同じ魔法の森に住んでいるのでしょ。」

「そ、そんなこと出来るわけないだろ!!!」

魔理沙は顔を真っ赤にして叫んだ。

「貴女がチョコを渡す相手がその態度で分かったわ。」

「うぅ・・・」

咲夜はボールの中のチョコを型に入れた。
チョコは静かにハートの型に流れていく。

「で、板チョコは持ってきたの?」

「ああ、一応3枚持ってきた。」

魔理沙はポケットの中から板チョコを出した。
金色の文字が光っている。

「じゃあ、まず、どんなチョコを作るのかを決めないと。」

「え?チョコにも種類があるのか?」

「あるわよ、トリュフとか、生チョコ。後はチョコクッキーにチョコケーキ。」

「じゃあ、名前の響きがいいからトリュフで。」

「難しいわよ。」

「・・・じゃあ、一番簡単なので頼む。」

咲夜はチョコを型に全て流し込むと、ボールを置いた。

「簡単なのは、チョコを型に入れて、その上にアーモンドを乗せたものとかかしら。」

「なら、それにするぜ、でも、あいつがアーモンドが好きかどうか・・・」

「アリスは多分好きよ。この前、アーモンドクッキーを出したら美味しそうに食べたし。」

「なら、よかった・・・って、渡す相手がアリスって、なんで・・・!!!」

魔理沙は顔を耳まで真っ赤にして叫んだ。

「はいはい。じゃあ、作り方を教えるわよ。」

「お、おう。」

咲夜はまな板と包丁を魔理沙の前に置いた

「まずはチョコを細かく切って・・・」

「わかった。」






〜10分後〜


「こ、これで完成か?」

「ええ、後は固まるのを待つだけよ。」

魔理沙と咲夜は星の型に入ったアーモンドチョコを見下ろした。

「それにしても、湯煎で溶かすとはな。」

「直火で溶かすと焦げるのよ。」

「まあ、それは実証済みだ。」

魔理沙はエプロンを外した。ボールからチョコが飛んだのでところどころチョコがついている。

「それにしても、星の型でよかったの?ハートのほうがいいんじゃない?」

「ハートはあまりにも、私には似合わないというか・・・」

「まあ、確かに星の方が貴女らしいわね。」

魔理沙はチョコを覗き込む。

「もう、固まったか?」

「まだまだよ、しばらくしないと固まらないわ。」

「じゃあ、しばらく待つのか。」

魔理沙は壁に立てかけていた箒を手に取った。

「どこに行くの?」

「待ってる間、パチュリーの所で本でも借りにいく。」

「分かったわ、固まったら知らせるから。」

「ああ、よろしく。」


魔理沙が台所の扉を開けようとした瞬間、
急に扉が大きく開いた


「咲夜さん!本命チョコください!!」

「嫌よ」

急に入ってきた門番の美鈴は一瞬で玉砕した。
そして、肩をがっくり落として門へと戻っていった。

「何だったんだ今の。」

「あの子、これで3回目よ。そんなに本命チョコが欲しいのかしら。」

「あげればいいだろ?あいつ落ち込んでたぞ。」

咲夜は魔理沙の目を見る。

「私はそんな簡単に本命チョコを渡すような軽い女じゃないの。」

「・・・はいはい。」


魔理沙は今度こそ大図書館へと向かった。



*******************

「パチュリー、これは何の本?」

「それは・・・」

紅魔館の大図書館では二人の魔女が本を見ていた。

一人はこの大図書館に住んでいるパチュリー・ノーレッジ。
もう一人はたまたま、本を借りに来たアリス・マーガトロイドだ。

「それにしても、チョコレートのレシピ本がここにあるなんて少し驚いたわ。」

アリスは周りを見渡す。難しそうな魔道書が沢山並んでいる。

「最近、小悪魔が買ってきたのよ。チョコでも作るのかしら。」

小悪魔とはパチュリーと同じく紅魔館に住み着いている悪戯好きの下級悪魔だ。

「でも、助かったわ。じゃあ、3冊借りていくわね。」

アリスは本を持って扉へ向かった。

「返却はいつでもいいわよ。」

「ええ、じゃあ来週ぐらいには返すわ。」

アリスは扉に手をかけようと手を伸ばした


バンッ

「パチュリー!本借りていくぞ!!」

「魔理沙!?」

「え、ア・・・アリス!?」

急に扉を開けたのは普通の魔法使い、霧雨魔理沙だ。
なぜ、ここにアリスがいるのかを理解できなくて焦っている。

パチュリーが魔道書を持って眉間に皺を寄せながら魔理沙に近づいた。

「先に言っておくけど・・・貴様に貸す本など無い!!金符『シルバードラゴン』!!!」

「うわっ!」

パチュリーのスペルが発動した。

「ま、待てって、今日は八卦炉を持ってきてないんだよ!」

ギリギリで弾幕を避けると、
魔理沙は両手を上げて何も持っていないことを表した。

「・・・なら、許す。」

パチュリーは魔道書を下ろした。

「・・・それより、なんでアリスが紅魔館にいるんだよ。」

魔理沙はアリスの方を向く。
アリスは魔理沙といい、パチュリーの弾幕といい、
まだ話の流れについていけていないようで、魔理沙の顔をキョトンと見つめた。

「なんで、お前がここに来てるのかを聞いてるんだよ。」

「・・・私は、パチュリーに本を貸してもらいに来ただけよ。」

アリスは先ほどパチュリーに借りた本を見せた。
魔理沙はパチュリーの方を見る。

「なんで、アリスには貸してるんだよ。」

「アリスはあなたと違ってちゃんと返すから。」

魔理沙はムッとした。

「魔理沙は何で紅魔館にいるのよ。」

「え? わ、私は・・・いや、暇つぶしに来ただけだ。それより、何の本を借りたんだ?」

流石に本人に、『お前に送るチョコの作り方を教わりに』なんて言えない。
魔理沙は話題をさりげなく変えた。

「チョコのつくり方の本よ。」

「え、お前もチョコを作るのか?」

「ええ、そうよ。・・・”お前も”って事は魔理沙も作るの?」

ギクッ

「そ、そんなわけ無いだろ、私がチョコ作りなんてするわけ無いじゃないか!」

「ふ〜ん、そうなの。」

(バレてないよな・・・)

魔理沙は安心した。


ガチャ


咲夜「魔理沙、チョコが固まったわよ。」


アリス「・・・・・・・・。」

魔理沙「・・・・・・・・。」



このタイミングで固まるなよチョコ。




*******************


「で、誰に作ったの?」

「え・・・?」

チョコを作ったのがバレた魔理沙はアリスとお茶を飲んでいた。
パチュリーは空気を察して出かけてしまった。

「だから、誰にチョコを渡すの?」

「誰でもいいだろ・・・。」

流石に『お前に渡すためだ』なんて、言えないし、言わない。
魔理沙は紅茶に砂糖を入れた。

「ふ〜ん。」

「お前こそ、誰に渡すんだよ。」

魔理沙は思い切って聞いた。確かに誰に渡すのかは気になる。
本当は知りたくて仕方だないのだが、ワザとそこまで興味がないように紅茶を飲みながら聞いた。

「だれって、霊夢」

ブッ

魔理沙は紅茶を思いっきり吹き出した。
なんで、よりによって霊夢なんかに・・・

「あと、パチュリーに、咲夜、あ、魔理沙にもあげるわよ。」

「・・・脅かすなよ。」

魔理沙は吹き出した紅茶を袖で拭った。

「私も、教えたから、あんたも教えなさいよ。」

「・・・そんなに聞きたいか?」

「なんとなく聞きたい。」

「・・・お前は本命チョコとかは渡さないのか?」

「本命?」

「ほら、恋愛感情としての好きな人に渡すやつだよ。」

「・・・。」

「本命は誰に渡すんだ?」

魔理沙は再びティーカップに紅茶を注いだ。

「魔理沙、ひとつ聞いていい?」

「ん?」

「何で、そんなに私のチョコのこと知りたいの?」

ガンッ

魔理沙は思わずティーカップを落とした。
床が絨毯だったため割れなかった。

「な、何でって・・・」

「それに、魔理沙のチョコの事は一つも教えてくれないじゃない。」

「それは・・・」

「教えないと、チョコあげないわよ。」

「そ、それは嫌だ!」


「じゃあ、教えなさいよ。」

「・・・・・わかった。」

魔理沙は顔を真っ赤にして。
アリスの手を掴んだ。

「え、何?」

急に手を掴まれてアリスは困惑している。

「い、言うからな、一回しか言わないからな。」

「わかった。」

いつになく真剣な魔理沙にアリスも真剣にすることにした。


「私が、チョコを渡す相手は・・・」

「うん。」





「お前なんだ。」


「え?」

「・・・。」

「え、今のって、え?」

アリスはしばらく困惑していたが、意味がわかったのか急に顔を赤くした。

「私も、言ったんだから、今度はお前の本命チョコの相手を言えよ。」

魔理沙は顔を真っ赤にしながら、アリスに詰め寄る。

「い、今、言うの?」

「今だ。」

「・・・じゃあ、言うわよ。」

アリスは魔理沙の手を握り返した。
真っ赤な顔をしている魔理沙を見つめる。



「私の本命は・・・」







ガチャ

咲夜「魔理沙、いつチョコを取りに来るのよ。」




アリス「・・・・・。」

魔理沙「・・・・・・・・・・・・お前、タイミング悪すぎだろ。」


咲夜「え?何が?」

魔理
「で、お前の本命は誰だよ。」

「・・・・言う気がなくなった。」

「え?」

アリスは立ち上がった。

「な、私はまだ本命聞いてないぞ!!」

「この微妙な雰囲気では言いたくない。」

アリスは本を持って扉へ向かった。

「な、どこに行くんだよ!」

「帰るの。」

アリスは振り向かずに言った。

「もうすぐ、パチュリーも帰ってくるだろうし。」

「でも・・・」

「・・・・・・の時に・・・」

アリスが小さな声で呟いた。

「え?」

アリスが振り向く

「あんたがチョコを持ってきた時に言うから!」


ガチャ  バタン


「・・・・。」

魔理沙は一人、図書館の真ん中で立っていた。

(今の言葉って、もしかして、アリスの本命は・・・)

「うわああああああああ」

完全乙女チックモードに入った魔理沙は近くにあった魔道書を抱きしめ
床でバタバタしていた。

「まさか!相思相愛かああああああ!!」





「・・・何してるの?」

「パ、パチュリー・・・。」

「・・・何してるの?」

「・・・いつからいたんだ?」



「うわああ、って貴女が雄叫びをあげている辺りから。」

「うわあああああああ!!」

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