百合
□【こいさと】甘い香り
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「ねえ、お姉ちゃん」
古明地こいしはティーカップを置くと、目の前でお茶請けのクッキーを食べている古明地さとりに声をかけた。
「なあに、こいし。」
さとりはクッキーを置くと優しく声をかけた。
焼きたての手作りクッキーと甘い紅茶の香りが地霊殿に広がる。
「私ね、言いたい事があるの。」
ペット達は二人の座るテーブルの横で昼寝をしている。
そういえばお燐やお空は何処だろう。
「なあに。」
さとりは優しく声をかけた。
彼女が話す度に甘い香りがふわりと中を舞う。
この香りはクッキーの香りか、紅茶の香り、どっちだろう。
こいしは微笑んだ。
さとりもつられて微笑む。
「お姉ちゃん、大好き。」
テーブルの上には赤い紅茶。
テーブルの上には紅いクッキー。
むせ返るような甘い香りが地霊殿を包み込む。
古明地こいしは目を覚ました。
先程まで夢を見ていたような気がしたが、思い出すことは出来なかった。
寝惚けた目を擦る。
まだ、夢の中に入るような感覚が体に残っている。
そんなお寝坊さんな彼女の意識を覚ましたのは甘い香りだった。