浅瀬拠り

□Dive into
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―すんすん。



いい匂いがする。
1年ぶりぐらいに嗅ぐかしら?

匂いの源に手を伸ばす。


つるりと滑った。
これは間違いなくあの子の…



「髪っ!?」



がばっ!と眼を見開くと、目の前には本当に黒髪が。
黒髪といっても大好きな恋人のものではなく、長年見てきた可愛くてしょうがない妹の艶やかな黒髪だ。


(家だった)


昨夜、自宅に戻ってからの記憶を呼び起こす。












「その子がお手紙にあったイティアですの?」


「そうよ。…あのね、列車に乗せる時に一悶着あってちょっと拗ねてるけど本当はとても賢くて優しい子だから」


「そうでしたか…イティア、お姉様はあなたが嫌いでそうしたわけじゃありませんから、いつかは解ってくださいね」


「にゃ、にゃー…」













「私も早く杖が欲しいですわ」


「どうして?」


「そのお人形をお姉様の姿に変えたくて」


「あ、本来は私の姿だったわよ」


「ええっ、どうしてお変えになったんですか!」


「ドロシアがいないから」


「私の方だってお姉様がいなくてすごく寂しかったのですから!」
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