鬼灯の冷徹

□お題
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「おい、丁、水を汲んでくるんだ」


「はい」





貴女がこの家から消えた日から



「…そんなに探したってこの家にはもう雪はいないぞ」


「!!…はい…」


私の中の時間はずっとあの日から止まっているようです











「やぁーいみなしご!!」



「……。」



貴女がいなくなった後もこの村は何一つ変わっていません


貴女がいた時と同じように

何時ものように起き

何時ものように雑務をこなし

何時ものように村の子達は私を馬鹿にしてきます



ですが

前なら私のことを馬鹿にしてくる子達を何かしら言い返してましたがなぜかそんな気にならないのです





「…お、おい何か言えよみなしご!!」


「…別に貴方と話すことなんてありません」


「な、生意気なんだよ!!」



「…ッ」



ドンッ!!





「お、おいお前やりすぎだぞ!」

「お、俺のせいじゃねぇよ!!」




お前が悪いんだからな!!

私を馬鹿にした子達はそういって逃げていった










バシャバシャ

バシャバシャッ



「……」


さっき倒されたとき
足を擦りむいたらしく私は川原で一人血を洗う



ふと岩場の影を見ると


「…ドクダミ」


まだ花が咲いてないドクダミの葉があった



丁は近づきその葉を1枚ブチりと千切った





これはドクダミっていうの

臭うけど我慢してね



ふと貴女が言った言葉を思い出す



すると



ヒラリ



視界に桃色の雪が散った



顔をあげるとそれは


「…さくら」


桃色に咲き誇る一本の桜だった



「…雪さん」




貴女はたくさんのことを知っていて
貴女はたくさんのことを教えてくれました
この葉っぱが薬になることも
この花がさくらという名前だということも





太陽のように暖かく笑って教えてくれました





貴女は花のようになりたいといっていたけれど


今ならハッキリ言えます


私は貴女には花のようになってほしくありませんでした









私の中に何かぽっかりと穴が空いた気がするのです







いつも私の隣には貴女が居てくれたのに…








〜寂しい〜


その感情に気づくのはいつ?



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