鬼灯の冷徹

□あの頃はこんなことも
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〜シトシトピッチャン〜











サーサーサー



ダムがないこの時代雨と言うのは
恵みの雨


けど、





『今日も雨…、』



こうもずぅ〜と雨だと




『暇だ〜』



することがなさすぎる







『暇だよぉ〜、暇すぎるよ〜、丁君は暇じゃないの?』


「私ですか?」


『そうだよ〜』


隣で取ってきた薬草の整理をしていた丁君


雨嫌だよね〜?


と言ってる間も音をたて止まない雨


けど丁君は





「私は…雨は嫌いじゃないです」



雨を見てそう言った





ーーーーーーー



『え〜、なんで〜?』


「なんでと言われましても…」



特に理由はありませんが…


そういってまた作業に戻る丁君



これでは私の方が子供みたいだ



むぅー





……よし!



『丁く「嫌です」言う前の拒否!?』



「どうせこの雨の中遊びに行こうと言うんでしょ?」


また病に掛かりますよ



と此方を見ずに私の身体のことを心配してくれる丁君にきゅんって来たのは仕方がないと思う




『大丈夫!だから出掛けよう?』

「チッ,だから行きません」

『えっ?今舌打ちされた?』




遊ぼうよ〜と言う私に対して邪魔なんであっちに行ってて下さい

とピシャリと言う丁君


『丁君のケチ〜』


「ケチとは違うでしょう」


そうだけど
そうなんだけど!


『なら私一人で出掛けてくる!』


「は?」



今日は無性に外に出たい気分!!







ーーーーーーー



『おおう、雨の中の森もなんだか新鮮だなぁ…』


あれからホントに一人で外に出た私


この時代傘なんて画期的な物なんてないので



『トッ●ロ、トッ●〜ロ〜!』



身体を覆い隠すデカイ葉がスタンダースです
気分はすっかりジ●リ気分!!


私は葉の茎を持ち、くるくる葉っぱ傘を回してさっきの鬱憤もなくなり超ご機嫌



『あっ、水溜まりの池が出来てる』


私はその水溜まりを覗きこむ
そこに写るのは



「やっぱり子供の頃の私だよなぁ〜」



前に生きた私がいた


鏡がないこの時代自分の顔を見るなんて川に写った自分を見るかこんな水溜まりで自分を見ることしかない



『何回見てもかおかしな感じ…』



なんで私は前の記憶があるんだろう

なぜ昔へと転生したのだろう

それは意味があることなのだろうか?

ただの偶然なのだろうか

ここにいる私は












ワタシなのだろうか











わからない

わからない

いくら考えてもその答えは見出だせないまま






シトシト

シトシト

雨はずっと降り続く


だから雨は嫌いなの

天気が暗いと考えたくないことが思い付く



私はいつのまにか葉の傘を捨て蹲る


雨が身体に突き刺さる


私は平成が恋しいのだろうか?



シトシト

シトシト


雨はずっと降り続く


身体中はもうずぶ濡れ

私は黙って目を閉じると





急に雨が降りやんだ


あれ?



眼を開けると雨は未だにずっと降り続けている



私の周りだけが降っていない



私はふと自分を覆う影に気づくとそこには





「貴女は相変わらず馬鹿なんですね」



そんなに病に掛かりたいんですか


そう言って自分がずぶ濡れになりながら私に両手で葉の傘をさしてくれている丁君がいた


『…丁君?』


「はい、なんですか?」


『いや、なんでここに…、家で薬草の整理してたんじゃ』



て言うか身体ずぶ濡れだよ!?
風邪引いちゃう!


慌てる私に丁君は平然とこのぐらい平気ですと言ってのける丁君


『か、風邪引いたらどうするの!?』

「その言葉そのまま貴女にお返しします」


『…う、』

な、なんも言えない



私は言葉に詰まってしまう



「貴女が何に迷っているか私には分からないですし興味はありませんが…」
『それちょっとひどくない?』






「こうやって傘を差すことはできます」


だからいい加減その顔を止めてください
不愉快です



そう言う丁君は不器用で酷いことをたまに言うけれど…




『ありがとう丁君』


「…別に見てる方がいい思いをしなかっただけです」



とても優しい男の子



雨の森のなか

ずぶ濡れになった二人の子供

女の子は笑い男の子の手を引っ張り走る


男の子は弾みで傘を離してしまい引っ張られるままついていく



森を抜けるといつの間にか雨も止んでいた


空は灰色から鮮やかな蒼を取り戻し



『丁君虹!』

「………。」



空を7色へと彩った










私は雨は嫌いではありません

雨のあとはいつも以上に日の光が明るく感じ



『丁君綺麗だね!』



まるで貴女のように思えるから


「…そうですね」










貴女にそんな顔は似合わない






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