鬼灯の冷徹

□番外編
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それはある日のことでした




「雪ちゃん、雪ちゃん」


『?、なんですか?』



地獄の仕事も少しずつなれた頃

一人、鬼灯様に変わって、裁判の後片付けをしていたら


「はいこれ、だいぶ遅くなっちゃったけど」


閻魔大王様からこれで好きな物買ってね?と封筒を渡され、失礼ながらその場で中身を確認してしてみると


『え?お金?』


「うん、いつもよく働いてくれてるからね」



始めての事例だったから手続きがだいぶ遅くなっちゃったけど、好きな物を買ってね?




地獄で初めてお給料貰いました




ー初任給ですー






『う〜ん、、、』


「あら?どうしたのぉ?雪ちゃん、何か悩みごとかしら?」


『あ!お香さん!』



お昼を食堂で食べていたら、お香さんもお昼らしく、ここいいかしらぁ?と私の前を指す

私は慌ててどうぞどうぞ!と言うとお香さんはクスリと笑いありがとうと言って席に着いた


うーん、やっぱり美人は何をしても絵になるなぁ…


「それで、何を悩んでいたの?」


『え?』


ぽけぇ〜、とお香さんを眺めていたら何かあるのか悩んでいたでしょう?と問われる

相談に乗るわよ?とやさしく笑う姿にいったい今までどの位の男の人(鬼)が涙を流したのだろうか?


「雪ちゃん?」


『…はっ!す、すみません。実はさっき閻魔大王様から初めてお給料を貰ったんです』


「あら、そうなの?」


良かったわね、と言ってくれるお香さん


「けど、どうして今の時期?」


もう雪ちゃんがここに来て数ヶ月たつけど…と、疑問に思うお香さん

うん、そう思うよね


『なんでも私の場合、立場的のモノも初めてなんで手続きに時間がかかったみたいなんです』


けど、私の場合

修業してるって立場だから、お給料貰ってもいいのか、それ自身疑問だったんですけど





「もちろん出ますよ」



ブラック企業じゃないんだから


そうスパンッと鬼灯様に言われたら、あ、はい。としか言えなかった


「ま、まぁ、雪ちゃんの場合はこっちもお願いしてる側だものねぇ」


けど、それがどうかしたの?と訊ねるお香さんに実は…と、話す



『…折角の地獄で初めてのお給料なんで、何に使おうか悩んでいて…』


生きてたときは
バイトで入ったお金は、友達と遊んだり、ランチに行ったり、服や小物の買い物に使ってたけど…


正直ここでお金を貰っても、
基本この閻魔殿から出ることないし、買い物って言っても場所もわからない、服も支給品だし
この食堂のご飯だって私は閻魔大王様の計らいでフリーパスなんだよね…、


うーん、と悩んでいたら、


「そんなに難しく考えなくたてもいいんじゃないかしらぁ?」


好きなときに使うのが1番。そういってお香さんはランチのうどんを口にする


『そうなんですけどー、せっかくだったらなんかパァーッと!使いたいんですよね…』



お香さんは初めてのお給料で何を買ったんですか?

そう訊くと、お香さんはうーん、と思いだし


「たしか…、簪?だったかしらぁ?」


『へぇー、お洒落ですねぇ』


そんなに高いものじゃなかったけれど、確かに初めてのお給料で買ったものって嬉しくなるわよね


そう昔のことを思い出す


簪かぁと、考えていると



「なら、いっそのこと皆に聞いてみたらどうかしらぁ?」


『え?』


「そうしたら、参考にもなるし、面白そうじゃない?」


お香さんがいいアイデアを出してくれた


『…そうですね、ちょっと聞いてみます!』




ーーーーーーーーーー



ー地獄ーにて桃太郎ブラザーズ


「え?オレ?オレはねぇー肉!あと、お菓子でしょ?それと肉!」

『シロちゃんはご飯…と』

「おいシロ、お前このままじゃマジでヤバイぞ?そうだなぁ、オレは…、寝床に使うクッションを買ったな」


「オレは確か…、新しいスカーフを新調したなぁ」




ーーーーーーーーーーー


ー食堂にてー地獄のチッ⚫とデール


「オレ?オレはー、新しい筆買った!あと、絵具とキャンパスも!」


「オレは、そんな何かに使うってほど使ってないですね…、少し親に仕送りしたぐらいですね」

「え?唐瓜仕送りしたの?偉いなぁ」

「お前こそ仕送りした方がいいと思うぞ、親に迷惑かけてんだからな」


『死んだ私が言うのもあれだけど、親孝行はした方がいいとは思うよ』


ーーーーーーーーーーー


閻魔殿にてー桃太郎&閻魔大王



「えぇー、ワシは流石に覚えてないなぁ…、」


「オレは白澤様のところで、ていうなら…、薬剤の本ですね」


学ぶことは多いですから



ーーーーーーーーーー



『皆、それぞれ使い方に個性が出てました』


「そうよねぇ」


当たり前だけど、やはり給料の使い方は皆それぞれで、私のこれといったものは見えなかった


聞いたことを一度食堂に戻りお香さんに報告する


「うふふ、無理に使わなくてもいいんじゃない?」


『そうですよねぇ』


やっぱりもう貯金しとこうかなぁ…


「そういうのは大切な人や、大切なときに取っておく方がいいわ」


そうお香さんに言われ
また、うーんと悩んでいると



『…あ、そうだ』


大切な使い方を忘れてた



ーーーーーーーーーー


ー数日後ー


「雪ちゃん雪ちゃん、アレやってアレ!」


『うん、ちょっと待ってねぇ』


「雪ちゃんありがとー!オレこれ大好き」


早く早くとせがむシロちゃんの口には私が買ってあげたブラッシング


「あら、雪ちゃん、この間はありがとぉ、とても素敵なハンカチだったわ」


『いえいえ!お香さんに似合うと思っただけでしたので…』


「あ、雪さんだ!雪さんこの間はありがとうございます、茄子も喜んでましたよ」


『喜んでくれたの?嬉しいなぁー』


あの後、


いつもお世話になってる大切な人達に何かプレゼントしようと思って

食堂にある通販カタログで皆にあった品を探してプレゼントした


お香さんにはハンカチ

シロちゃん達動物達にはそれぞれにあった毛繕い用のブラシ

茄子くんには筆で、唐瓜くんには、メモ帳とペン

そして桃太郎さんには、最近、白澤さんのことで悩んでいたから胃薬をプレゼントした

白澤さんには、湿布と絆創膏を送ったけど、使わない日がくることを願う


そして、


『閻魔大王様!これ、私からのお世話になってる感謝の気持ちです。受け取ってください』



「いやぁ、雪ちゃんありがとう!優しいねぇ、中に何が入ってるの?」


『閻魔大王様の好みがよくわからなかったので、最近人気なお菓子やさんのお菓子です』


「ほんとに?嬉しいなぁ〜」


『いえいえ、いつもお世話になってますので!これからもお願いします』


裁邸で閻魔大王様分も日頃の感謝としてプレゼントを贈る



あと残すは


「…なんですか?」


この人(鬼)だけだ
正直、1番何をプレゼントしたらいいのか迷ってしまった
けど、今の私が1番お世話になってるのもこの人だというのは事実なので、渡さないわけにもいかない


『鬼灯様鬼灯様、これ良かったら受け取ってください』


そういって私は鬼灯様に箱を渡す


すると鬼灯様はありがとうございます
とだけ言って、早速箱の包装を解いていった


開けるの早ッ!



「…これは、」


『鬼灯様、よく書類整理とかをなさっているので…』


もし良かったら使ってください


それだけ言うと、鬼灯様はもう一度ありがとうございますとだけ言って箱を閉めた



あれ?外れだったかな?

今のはやっぱり社交辞令?

うーん、とまた悩んでいると

鬼灯様から今は仕事をしなさいと怒られてしまった


まぁ、一応喜んで貰えたようだし
いっか



私はハイと返事をして仕事に取りかかる







その日の夜

鬼灯は自室の部屋で書類を纏めているなか


彼の手には、真新しい万年筆が握られていた


それは決して外では使わなかったけれど、使い終わってもなお、大切に保管されていたそうな




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