コナン

□シレネの花束に一輪の勿忘草を
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ーepisode01ー
〜それぞれの朝/金曜日の出来ごと〜








<毛利宅>


「蘭姉ちゃんおはよう〜」

その日、
工藤新一こと、江戸川コナンは
ありふれた平和な朝を迎えていた


「あっ、おはようコナン君、今日の朝はパンでもいっかな?」


「うん!」


最近のコナンは、いろいろと慌ただしかった


大きな要因は、蘭の父親の毛利小五郎に、弟子入りした安室透と言う男が1階のポアロで働きだしたことだった


そして、そのあとすぐ、コインロッカーの鍵がどこのものか探してくれと言う依頼で小五郎の事務所で殺人事件が起き、それがつい先日起こった強盗犯の逮捕にも繋がって怒濤な日常を送っていた


その逮捕には灰原や博士、そして昴さんや小五郎に弟子入りした安室の活躍が多いにあり

正直面倒なヤツが増えたと思っていたコナンだったが、彼の様子を少し見ることにした



「(その後も、バーベキューに誘われた夫婦の家で殺人にはならなかったものの事件に巻き込まれたしな…)」


コナンはまたお世話になるとも思わなかった懐かしの教科書を詰めながら小学校へ行く準備を進める

ある意味小学校にいってる時が平和なのかも知れないと思わず苦笑した



朝の準備も整え、蘭が作った朝御飯を食べようとリビングへ向かう

するといつもと違う光景にコナンは気づいた



「あれ?おじさんは?」


いつも毎朝、TVの前を陣取っている小五郎がいなかったのだ


「それがまだ起きてこないのよ、おっかしいわね…、いつもこのニュースキャスターのお姉さんの時は起きてくるのに…」


コナン君、悪いけどお父さんの様子を見にいってくれる?

蘭に頼まれては断れないコナンは素直に返事をして、起こすために小五郎がいるであろう部屋のドアを開けた


「おじさーん?朝だよ?ニュースキャスターのお姉さんもう始まってるよ?」


いつもならこれだけでも効果覿面なのだが、今日はどうやら本格的に可笑しい


「う″、ぅううん…」

「!、おじさんどうしたの!?」


コナンがベッドを覗きこむとそこには、額にこれでもかと脂汗がでて、悶え苦しんでいる小五郎の姿がコナンの眼に映った



コナンは急いで体調を確認する


「おじさん!どこか苦しいの?痛いの?」

すると呼びいったまま帰ってこないコナンを心配して蘭も部屋へとやって来てきたが、ただ事ではない雰囲気に驚き慌てて小五郎に話しかける



「ちょっ、どうしたのよお父さん!」


酷い汗だよ?


心配する蘭にコナンは救急車呼ぶからおじさんのこと見てて!と急いで119番へと連絡した


その間にも、蘭は何処が痛いの?大丈夫?と声をかけ続け心配する


そんな蘭に小五郎は、微かにだったが口を開いた



「…、は、はらが……」


「へ?お腹?」


「腹が…痛ェ…。」



「「……え?」」



穏やかな朝とは裏腹に
ここ毛利事務所から響く

救急車のサイレンとの音と共に、江戸川コナンとしての慌ただしい一日が今日もまた始まる






ーーーーーーー


<安室宅>



「…あぁ、その件についてはお前に任せたぞ風見、…あぁ、切るぞ」


そう言って、仲間である風見からの電話を切り、安室透、もとい、降谷零は朝の準備を進めていた


今日は先日
殺人事件と銀行強盗の容疑者を捕まえ見事ある程度の信頼を得た
毛利小五郎の弟子として彼が働く下の一階のアポロという喫茶で働く日だ


シェリーと関わりがあるかも知れない毛利小五郎の元で張り付き、願わくば赤井秀一の情報を掴み、そして、やつらに引き渡し大手柄をあげ組織の中心核へと食い込み、奴等を一網打尽にする


それが俺の役目



FBIが、…赤井秀一が組織の奴等にどうされようと知ったことではないしな



すべては正義の為



その為に俺は


大切なものを置いてきた



ヒロ

松田

萩原

伊達


そして






『降谷さん』




「………あれからもう五年になるのか」



同士よ、今の俺を見たらどう思う?

笑うか?

それとも怒るだろうか?

…だが、どちらにしても俺は突き進もう

例えそれが修羅の道でも

お前たちが命を賭けて守ったこの日本を…

俺が守って見せる



だから





だから頼む


お前だけは、なにも知らず

綺麗なままで

笑って幸せになってくれ


あれだけ散々泣かしたのに何を言っているんだと自分の言葉に思わず失笑する



けど、もうお前だけだ…

お前だけなんだ

俺の手の平からこぼれ落ちず

たった一つ残った大切な存在




俺は鏡の前に立ち


髪の毛を整え、俺の…

僕の安室透が完成する


僕は、暫くの間じっと鏡を覗きこむ


昔はイヤで仕方がなかったこの金髪


けど、あの時のお前の一言で僕の見る景色は変わったんだ



僕は靴を履き、

行ってきますと

返事の返らないこの部屋に言い残し

ポアロへと出勤する





…今日はいい天気だ






「なぁ、お前もこの空を見ているか?



白夜」




今日は何か良いことが起きるような気がする


今日は少し肌寒いし、コーヒーは多めに作っておくか




こうして僕の
安室透としての一日が始まった




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