桜蘭高校ポケモン部

□誰よりも愛しい声
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鏡夜

研究室は
吹き抜けの中だった
天井はガラス張りで夜空には三日月がある
俺達が立っている足場は
吹き抜けの中央まで延びていた
その先には人間が浮いていた
否、正確に言うと浮かされていた
サイコキネシスか
その姿はボロボロで、目も虚ろ
綺麗だった青色の目が、黒ずんでいた

「ミノル…!?」

デントがミノルに駆け寄ろうとした
だが、それはシアインによって遮られた

「近づくな。」

灰色のシアインの目が
青く光った
それを見た瞬間、カミルが叫んだ

「駄目です!デントさん!逃げて下さい!」

だが、間に合わず
シアインの手から放たれた白い光によって
デントは軽々と弾き飛ばされた

「…ッ!!ゴチルゼル!」

咄嗟にカミルが自分のポケモンの名前を呼んだ
するとゴチルゼルが一瞬でデントの元に行き
壁に叩きつけられる寸前で
デントを受け止めた

「…く…ありがとう…ゴチルゼル…。」
「大丈夫ですか!?デントさん!」
「お陰で無事だよ…ありがとうカミル。」
「良かった…気を付けて下さい…彼女の目が青く光る時は、ミュウの力を使ってきます。」

カミルが言い終わると
シアインが、ミノルの元に行った
そして、ミノルの頭を抱き締めた
それでもミノルは虚空をみつめている

「邪魔しないでくれる?…ま、でも残念。
遅かったね。」

ミノルの頭を撫でながら言うシアイン

「もう、ミノルはアタシの子。アタシの言うことしか聞かない。」

その言葉にデントがシアインを睨む

「……それは…どういう意味だい?」

するとシアインはニヤリと笑った

「意味も何も、そのまま、洗脳したの、ミノルはもう、アタシの。」
「!?…そんなッ…!」

再びデントが走ろうとすると
シアインがすかさず目を青くし、手を向けた

「動くな。聞こえなかった?もう、遅い。あんたらが出来ることは、ここで死ぬ事だけ。」

するとデントは下を向いて
唇を噛んだ

「僕はっ…また…助けれなかった…のかッ。」
「そーゆーコト。」

笑うシアインの手に光が集まる
その手は俺達に向けられている
だが、その光が放たれる事はなかった
シアインに向かって炎の塊が放たれたからだ

「…ッ…!?」

シアインはすぐさま避けた
そして、放った人物を見た

「…カミルッ…。」
「シアイン様。」

カミルの目は赤く光っている
カミルはシアインの方を向いたまま
デントに向かって叫んだ

「デントさん!僕と環さんでシアインを食い止めます…鏡夜と二人で早くミノルちゃんの元に!!」

カミルの言葉に
デントは目を見開く

「…でも、間に合わないって…。」
「諦めたら駄目です!きっとまだ、間に合う!間に合わせる!僕だってシアイン様を…救ってみせる!だから…デントさんも!」
「カミル……。」
「早く行って下さい!」
「デント!鏡夜!行けッ!!」
「二人とも…ありがとう!行ってくる!」

俺達は
ミノルに向かって走った
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