spark!

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同日 某時刻
事件現場 バスケ部部室

「さてと…」

木村は被害者が殴られる瞬間を見ていた。それならば現場に凶器が残っているはずだ。
…最も、犯人がそれを持ち帰ったりしていなければの話だが。

死体のあった場所の近くをざっと観察してみる。
ベンチは倒れているし、被害者のロッカーの扉は見事にヘコんでいる。争った跡がありありと残っていた。

「(殴られた割に血痕は残ってない、か…)」

しゃがんで血を拭き取った跡がないかなどを大まかに調べたが、そんな跡は一切なかった。
本気で殴られたというのなら、頭が割れて血だまりぐらい出来ていてもおかしくないのに、不自然なぐらいに綺麗な床だ。
そしてその床、死体の付近に落ちていたのは、コンビニのレシートと新品のような片方だけのバッシュ、電池の入っていない目覚まし時計。この3つだ。

コンビニのレシートを見ると、飲料と雑誌『月バス』が昨日の20時36分に購入されている。
片方だけのバッシュはまだ新しく、少し前に買い換えたもののようだ。死体から少し離れたところに落ちていた。

そして電池の入っていない目覚まし時計。これは電池がフタごと無くなっていて、見渡す限りではそれらしい物は転がっていない。しかし、よく見ると側面が少しヘコんでいるようだ。
ということは、この目覚まし時計が被害者を殴打した凶器なのだろう。

「(ま、凶器よりも問題なのは…)」

何故犯人が一撃でトドメを刺さなかったのか、だが。
鑑識に現場写真を貰う為、ヨイショと立ち上がろうとした、その瞬間。

「あーッ!あんた、なんでこんなとこに居るのよ!?」

この声とサクサクと何かを噛み砕く音。まさか

「宝月刑事…」

最悪だ。こんな所でこの人と遭遇するなんて。
 
 
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