spark!
□プロローグ
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7月8日 16時37分
地方裁判所 第3法廷
「―――…以上が検察側の主張です。弁護側、何か異議があればどーぞ」
「むぅ……っぐ…!」
「無いようですね。裁判長、判決を」
「はい。……ゴッホン!検察側の主張はとても論理的なものであり、先程の立証を弁護側は覆す事が出来ないようです。よってここに、被告人を有罪とします」
「お疲れ様、京岳くん。今日も良い仕事ぶりだったよ」
「牙琉検事…」
裁判が終わり、被告人控え室の前に立ち、自動販売機で買ったコーラを飲んでいると、牙琉検事に声をかけられた。
牙琉検事とは特別親しい訳でもなく、顔を合わせれば少し話す、というぐらいだ。話したのも数える程度しかない。
「見てたんですか?趣味ワルいなぁ…」
「そう言わないでくれよ。期待の新米検事の活躍を見るぐらい、許されてもいいだろう?」
「今をときめくエリート検事サマが何を仰いますやら」
「くっくっ、嫌みはよしてくれないかい?」
エリートに期待の新人扱いされたら嫌みの1つや2つ言いたくもなるだろう。
牙琉検事みたいに格好良くて、多少じゃらじゃらしようと許されるぐらい良い功績を収めてみたいものだ。彼自体はジャラジャラしていてあまり好きではないのだが。
そう思いながら、またコーラを口に含んだ。
「あぁ、そういえば君に伝える事があったんだった」
牙琉検事がいつになく神妙な顔つきになる。こういう時はロクな事を言い出さないと、彼のかつてのバンド仲間が言っていた。
さっきやっと裁判が終わった所なのに。俺はため息をついて、牙琉検事の顔を見据えた。
「事件だよ、京岳検事」