spark!

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7月9日 9時32分
事件現場前

「ここか…、事件の現場は」


秀徳高校。

資料によると中々に偏差値の高い学校で、勉強には割と力を入れているようだ。それと合わせて部活ではバスケ部が特に活躍しているらしく、バスケ部関係者には『王者』と呼ばれているらしい。それ程強いと言うことだろうか。

「お疲れ様ッス!京岳検事」

「あぁ、イトノコ刑事」

今回の現場検証には、イトノコ刑事が付き添ってくれる事になった。俺の部下が今回人手不足という理由で他の件に駆り出されていて、今回の事件の話を聞いた御剣検事が、彼の直属の部下であるイトノコ刑事を俺に貸し出してくれたのだ。
イトノコ刑事も暇ではないだろうに、わざわざ新米検事のお守りだなんて、申し訳ない。それと同時に、こんなに大変な思いをしても変わらない彼の安月給に心底同情した。

「今日も京岳検事はイカしてるッス!」

イトノコ刑事は何に関しても優しいから好きだ。お世辞でもこうして褒めてくれるなんて。

「御剣検事と比べたら月とスッポンッスけどね!」

正直過ぎるのが玉にキズなのだが。

とりあえず一発どついておく。痛いッス!とかなんとか言ってるけど俺は知らん。
イテテと言いながらも気を取り直したであろうイトノコ刑事は学校を見上げた。

「今回の事件は学校で起きたんッスか…」

「らしいね」

「それも、殺人事件…」

最近の高校生は物騒ッスなぁ、とイトノコ刑事は顔を蒼くさせながら大袈裟にリアクションをする。その様子を横目で見ながら、俺は秀徳高校の正門へ足を向けた。

「ひとまず…、現場で詳しい内容を聞くとしましょ。話はそれからです」













「こりゃ…なんとも」

イトノコ刑事が俺の横でぼそりと呟いた。それも仕方ないと思う。何故なら、被害者のものと思われるロッカーがぐちゃぐちゃに荒らされていたからだ。部室で起きた事件だから、部員同士のいざこざかと思っていたのだが、どうもそれだけじゃないらしい。犯人がロッカーを荒らしたのだろうか。そうなると盗難か?…それはまた後で考えることにしよう。



「鑑識の……あぁ、そこの人。ちゃちゃっと説明してくんない?」

「あ…、はい!
…今回の事件の被害者は、バスケットボール部員の吉木 大野(ヨシギ オオノ)。三学年です。死因は窒息死。死体の側に落ちていた縄跳びで首を絞められたものと判明しました。容疑者は複数。今事情聴取を行っている最中です。解剖結果の資料は、こちらに」

「あぁ、ありがとう。ご苦労様です」

解剖結果を鑑識から受け取り、それをぱらりと捲ってみる。

吉木 大野(18)187cm/73キロ
死因は窒息死。犯人に絞殺された模様。それとは別に、後頭部に殴打された痕跡有り。死亡推定時刻は20時〜21時の間。

先ほど鑑識から聞いた内容とほぼ同じ内容だったが、1つ引っかかる事があった。

「殴打された痕…?」
 
 
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