裏僕小説その4
□彌涼×エレジー「秘薬を作ろう♪」
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「ははあ。お前が噂のエレジーか。悪いがお呼びじゃない。帰ってくれ。もしくはチェンジだ」
それだけ言うと彌涼は、目の前の女にもう興味がないとばかりに背を向けて、化学式だか術式だかの記号を地面に書き始めた。
長い生涯で無視をされるという屈辱に出逢わなかったエレジーは、足首から外されたムチを握り締めて、唇をわなわなと震えさせた。
あのゼスでさえ、つれない態度はとっていても、敵意を感じられるのに、と。
「こんなにつれない態度を取られたのは初めてよ。私が誰か、ちゃんと理解しているのかしら」
すると彌涼は、古書から眼を外さないまま平然と言った。
「オーパストだろ。俺は人質としての価値はないし、俺一人を殺したところで一族にとってはなんの損害もない。俺は今忙しいんだ。美人は歓迎だが出直してくれ」
にべもなく二度目の拒否をされては、エレジーの高慢なプライドに亀裂が入る。
青白い肌を怒りに歪ませて、エレジーは肌蹴た軍服の胸の谷間から、ある物を取り出して不敵に笑った。
「じゃあコレはいらないのね。せっかくあなたの為にと思って用意してあげたのに」
含みを持たせた笑いを投げ掛けると、訝しんだ彌涼が振り向く。
そして、驚愕とともに眼鏡の奥の瞳がきらきらと輝き出したのだ。
「そっ……それはっ!!年に一度の蒼の夕月夜にしか現れないという幻のキノコ、『レアノカル』!!」
その男根の形をした黒いキノコこそ、彌涼が森の中を彷徨い続け、喉から手が出るほど欲していた秘薬の材料である。
「フフッ。大きくて、太くて、立派でしょう?私の言うコトを聞いてくれたら、あげてもいいのよ」
途端にエレジーが勝ち誇った笑みを浮かべ、彌涼は憑かれたようにキノコに魅入っている。
「わ、分かった。なんでもとはいかないが、出来る範囲で聞こう。だからそれを俺にくれっ!」
ガバッと跳びかかった彌涼を華麗にかわすと、ムチを振り上げて足払いをさせ、陣の中心に仰向けに倒れさせた。
ムチを投げ捨てたエレジーは、彌涼の胸元に高いヒールの先を押し付ける。
「おいおい、女王様プレイか?俺はそっちの趣味はないぞ」
冗談めかして笑う彌涼には答えずに、エレジーは彌涼から古書を取り上げ、目の前でキノコをかざして見せた。
「あなた、知ってる?この秘薬は一人では作れないのよ。コレの他に、もーっと大事な、男と女の共同作業が必要なの」
「と、いうと?」
彌涼はさして驚きもせずに、自分の上に乗り上げた女を見つめている。
「男の精液と、女の体液。そしてこの陣の中心で二人同時に絶頂を迎えると、秘薬が完成するってワケ」