裏僕小説その3
□愁生×遠間とルゼ×ルカ「一度で二度おいしい」
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ステンレスのボールに生クリームを入れ、手際よく泡立て器でかき混ぜる。
純白のなめらかな液体は空気を含ませながらとろみのあるクリームに変わり、つん、とツノが立ったところで遠間は動かしていた手を休めた。
厨房から食堂に移動すると、愁生がひとり、優雅に紅茶を嗜みながらテーブルの上に広げた書類を眺めていた。
「あれ?愁生さん、九十九くんはどちらに?」
先程まで愁生の隣に座っていたのだが、見当たらない。
「九十九なら、おやつが出来るまで部屋に戻っていると言っていましたよ。なんだかすごく甘い匂いがしますね」
「はい、九十九くんのリクエストでチーズケーキとショートケーキを作ってみたんです。今、生クリームを作っているんですが、チョコレートケーキはガトーショコラと生チョコクリームのどちらがいいか訊こうと思いまして」
「九十九はそんなに食べるんですか?どちらでもいいと思いますよ。遠間さんも大変ですね」
「いえ、いつも美味しいって召し上がってくれるので作り甲斐があるんです。…ところで、なんの書類を見てらっしゃるんですか?」
「ああ、大した物じゃないですよ。テーブルの上に置いてあったんです」
大事な事件の資料なのかと思ったが、そうではないらしい。
愁生が横に滑らせた用紙を、遠間は覗いてみた。
「えーっと…『めたれの夢の中 気まぐれあんけーとその2? 一位チーズケーキ、ケーキ系 二位アイスクリーム 同二位チョコレート……』、なんですか?これ」
「期間限定で誰かが行っていたあんけーとの結果です。十八種類の好きなお菓子を選んでもらって、選んだ選択肢で登場人物とカップリングが決まるそうですよ」
「へぇー…って、全然解らないんですが…カップリングってなんですか?」
「いえ、遠間さんは知らなくていいんです。それより、俺も手伝いましょうか。一人では用意も大変でしょう?」
「えっ!そんな、僕一人で大丈夫ですから!」
「遠慮は無用です。俺も人並みに雑用くらいは出来ますから」
しきりに恐縮する遠間を促し、二人は厨房へ向かった。