裏僕小説その3

□「第二回DYIM会議延長戦」
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ある日の黄昏館の、とある一室。

集まった男性戒めの手と、彌涼、橘、遠間の面々が用意された席にそれぞれ着いていた。

「あのぅ〜九十九くんにお誘い頂いて来たのですが、このボードに書いてあるDYIМってなんですか?」

正面に置かれたホワイトボードに、天白の字体で「第二回DYIM会議延長戦」と書かれている。

「まさか、この不毛な会議に続きがあるとはな‥」

第二回というからには一回目も開会されたのだろうが、議題の内容が分からず首を傾げる遠間に、男性戒めの手たちは一様に複雑そうな表情をしていた。

「僕も総帥からお呼ばれしたんだけどサ、なんで皆そんなに渋い顔してんのヨ?」

「橘に同じくだ。なんだ、そんなに重要な話し合いなのか?つーか、夕月とルカはなんでいないんだ?」

「まあまあ。天白様がいらしたら分かりますから」

矢継ぎ早に質問を投げかける橘と彌涼を九十九が宥めていると、タイミングよく部屋の扉が開かれた。

「やあ皆。集まっているね」

「総帥遅いヨ〜、僕待ちくたびれちゃった」

「おい天白、早く説明しろよ。なんだこのDYIMってのは」

「はっはっはっ。まあそう急かすな二人とも」

詰め寄る橘と彌涼をかわしながら、天白はボードが置かれた正面に立ち、着席した皆々を見渡した。

その姿はさながら、教壇に立つ教師と生徒の様にも見える。

「いやあ、九十九から前回の会議の模様を聞いてね、面白そうだから私も参加したくなったんだよ」

「つーか、なんで前回より人数が増えてんだよ。でもって、なんで天白が議長なんだ!」

「前回は俺の独行だったからな。天白様のご判断を仰ぐ方がより公平で正確な順位が付けられるんじゃないのか」

不満をあらわにする焔椎真に、斎悧が緩慢な態度で答える。

「前置きはいい!早く先に進んでくれ。気になって仕方ない」

研究者の性か、彌涼は目の前の知的好奇心を満たしたくて堪らないようだ。

「まったく大人達は落ち着きがないな。では愁生、君から説明してもらえるかな?」

指名された愁生は席から立ち上がり、冗談とも言える様な内容を至極冷静に、淡々と音読した。

「DYIMとは、誰が、夕月を、一番満足させられるかの略称です」

「満足?なんだそりゃ」

まったくピンと来ないのか、彌涼、橘、遠間の三人はそれぞれに呆けた表情をしている。

「まあ、俗に言うならばセックスが巧いのは誰か、ということだ。夕月を抱いた時、彼が一番満足する相手は誰か。これはそういうランキングだ」

「せ…セセセっ…!!」

一番動揺を見せたのは遠間だった。

見事に椅子から転がり落ちて、床に頭をぶつける。

「遠間さん、大丈夫?」

九十九に手を差し伸べられ、やっとのことで起き上がった遠間は、顔を真っ赤に染めて扉に向かって走り出そうとした。

「ぐえっ…ぼ、ぼぼくは場違いですので失礼させて頂きます!きっとろくなことにならな…深く関わってはいけない気がするので!」

逃げ出そうにも襟首を掴まれ、その場で足踏みするに留まっている。

「遠間も参加だ。なに、軽い話し合いの様なものだ。難しく考える必要はない」

「うっ‥わかりました‥」

一族の長である天白に言われてしまえば逆らえる事など出来ず、遠間はしおしおと着席する。

「よし、では改めて。さっそく順位を付けていこう」

「‥天白様、なんだか楽しそうですね」

いつになく機嫌の良い天白は、ボードに順位表を書き連ねていった。

「まず一位だが、これは勿論私だ。そして二位は斎悧、三位が九十九、四位から順に、遠間、五位橘、同点六位で千紫郎、愁生、七位が彌涼、八位黒刀、最下位焔椎真だ」

「おいっ、なんでまた俺が最下位なんだ!」

「総帥、僕がかっちゃんより下ってどういうことヨ!?」

「天白!俺がワースト三位っておかしいだろ!」

自分の順位に口々に反発し、不満を爆発させている。

「皆落ち着きなさい。私は体内に悪魔を飼ってはいるが、全員が一斉に喋っても聞き分けられる能力はないんだよ」

「天白様。一から順にご説明して頂けますか」

喧噪が飛び交う中、早くも荒れだした空気を掻き消す様に愁生の冷静な発言が皆を鎮めさせる。

「そうだな、まず私が一位というのは当然だろう。なにせ千年以上も生き続けているのだからね。自慢ではないがありとあらゆる性技を習得済み、年の功というやつだよ。そして、夕月への愛情も君達とは比べ物にならない」

この答えには全員が渋々ながら納得した。
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