裏僕小説その5

□「メリークリスマス!みんなが幸せになれますように」
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「ねえ、ゆっきー。サンタクロースってなに?」

談話室の大型テレビで、「一足早く、保育園にサンタクロースがやってきました」のニュースを観たソドムは、隣に座る夕月に、興味津々な問いを投げ掛けた。

赤い帽子に赤い服、白い髭を生やした恰幅の良い好々爺が、なぜ白い袋から子供たちにプレゼントを配っているのかが疑問のようだ。

「サンタさんは、クリスマスの夜になると、いい子の子供たちの所に来て、欲しいプレゼントをくれるんだよ」

夕月は小さな子供に語り掛けるように、日本の一般的なクリスマスと、サンタクロースの概要を説明した。

二人の微笑ましいやり取りを、ルカと橘が見守っている。

「ゆっきーのところにも、サンタさんがくるの?」

「僕はもう大きくなったから、サンタさんは来てくれないけど、ソドムのところにはサンタさんが来てくれるよ」

ソドムは愛くるしい尻尾と耳をぱたつかせ、大きな瞳をきらきらと輝かせた。

「ゆっきーはサンタさんに会った?」

そこで夕月は少し考え込み、純粋な子供の夢を壊してはいけないと、聖母の如き微笑みを向ける。

「うん、会ったよ。だからソドムも会えるかもしれないね」

「じゃあボク、サンタさんにお手紙書くね!キラキラがいーっぱい欲しいの!」

両手を広げてこの位、と夕月に見せ、テーブルの上に広げていた画用紙とクレヨンに、習ったばかりのひらがなを書き始める。



「ルカ、橘さん、ちょっといいですか」

ソドムの嬉々とした様子を見つめながら、夕月はルカと橘に手招きをした。
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