裏僕小説その4
□天白×九十九「愛玩」
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今日の午後に黄昏館に行くと、九十九の携帯にメールが入った。
彼は天白が書斎に行くのを待って、逸る気持ちを抑えずに扉を叩く。
「天白様」
「久しぶりだね九十九。イイ子にしていたかい?」
待ち焦がれた微笑に胸が満たされ、九十九はいつもの習慣で天白に抱き着いた。
胸にすり寄せる甘えた仕草に、天白も甘い秋波を向ける。
視線に気付いた九十九が顔を上げると、細い顎が持ち上げられ、すぐに唇が重なった。
手慣れたキスに待ち焦がれ、九十九も応える。舌を差し出し絡めれば天白の口腔に迎えられ、啄むキスは濃密で淫らな口づけに変わる。
合わせた唇と同じように、九十九は下半身を揺らして天白の躰に擦り付けた。
口づけはさらに情熱を増し、粘着質な音と共に九十九の顎に雫が伝う。
「きちんと我慢していたようだね。一回も抜かなかったのかい?」
しなやかな指が、服越しに盛り上がる九十九の昂りをなぞる。
九十九は下肢を震わせ、性の興奮から滾った目許を潤ませた。
「はい。約束通り触れてません。だから…」
今すぐにでも溜まった熱を解放して欲しい。あなたの手で、躰で。
懇願の眼差しは待てを教えられたペットのように忠実で、従順な彼に、怜悧な眼が眇められる。
「私に触れて欲しい?」
わざとらしく問い掛けると、九十九はこれ以上は限界だと切実に頷いた。
天白は九十九の躰を抱き上げ、四人掛けのソファに腰を下ろさせた。
期待に溢れた静かな視線に、天白も眼差しだけで応えて見せる。
「独りで処理してみなさい。出来るだろう?私は仕事があるからね」
子供に諭す保護者の口調で微笑むと、天白は書斎の机に戻って行った。
残された彼は迷子のように、両腕で躰を抱いて震えていたが、やがてその身を仰向けに倒し、ズボンのファスナーを下ろし始めた。
ぱらぱらと、束ねられた用紙を捲る音が響く。
規則的な音に混じり、場にはそぐわない淫らな喘ぎが室内を満たしている。
「はぁっ…天白さまぁ…」
天白に見せつけるようにして、両脚を開いた九十九は、一心に性器を扱いていた。
その姿は初めての自慰を覚えた男子のようでいて、性器を扱い慣れた青年の容姿とがひどくアンバランスで、彼の穏やかな美貌を際立たせる。
きつく眼を閉じ、躰をくねらせては天白に抱かれることを願う。
洩れる体液が両手で扱く動きをなめらかにさせ、熱に侵された淫音が興奮を煽らせた。
天白は彼の姿に一切眼を向けず、この室内には自分しかいないように、平然と仕事を続けている。
「天白様…っ」
何度も名前を呼んでは自らの性器を絶頂に導き、九十九は喉元を仰け反って射精した。
ようやく天白は視線を彼に戻し、声音で彼を誉める。
「こちらに来なさい」
九十九はふらふらと立ち上がり、天白の足元に跪いた。
磨かれた靴に口づけ、達したばかりの憂えた眼で天白を見上げる。
躾けられた小犬の忠誠に、天白は彼の首元に手をかけた。
「九十九。きみは誰の物だ」
「天白様の物です」
九十九の首に廻された天白の指は、所有の証を示す首輪だった。
力を籠めれば息の根は止まり、離したところで飼い犬は逃げもしない。
彼は喜んで鎖に繋がれていた。
自分の思う通りに手綱を引き、忠実な愛玩動物を作り上げる。
口許に指を宛がえば、彼は愛おしむように口に含み、舌を出して舐め始める。
「ふっ…あぁ…天白さま…」
柔らかな口内の隅々まで指を蠢かせる。時折喉の奥まで差し込むと、苦しげな呻きが漏れた。
「私が何を求めているか、解っているね。上手に出来たらご褒美をあげよう」
九十九は唾液にまみれた天白の指に口づけて、目の前の股間に顔を近付け、ファスナーをゆっくりと下ろした。