裏僕小説その4

□カデンツァ×エレジー「享楽」
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「ねえカデンツァ、退屈で死んじゃいそうなの。相手をしてよ」

男の肩に手を掛け、しなだれかかる女は、濃いメークが施された目許を細め、秋波を送った。

人間の男なら簡単に陥落する艶に溢れた美貌も、目の前の男には通用しないことを知っている女は、予想していた通りの冷淡な反応につまらなそうに鼻を鳴らした。

「お前では俺の相手に不足だと、以前云った筈だが」

「やあね〜、私を満足させて欲しいのよ。今、私が何を求めているか解らない、なんて不粋なコトは云わないでしょう?」

男の髪を耳に掛け、紅蓮の長い毛先を指先に絡ませて食い下がる。

「………」

猫の様な撫で声と、鋭さの混じる色目に、カデンツァはエレジーの柳腰を引き寄せた。

相手がその気になったと見るや、エレジーは口角を上げてカデンツァの項に両腕を絡ませる。

「セックスは人間だけの嗜みじゃないでしょう?女体の私は最高よ、試してみて」

腰をくねらせカデンツァの下腹部に擦り付け、ルージュの艶を帯びた唇を近付ける。

男は顔を寄せ……鋭利な二本の牙で女の唇に噛み付いた。

「…っ!」

エレジーの唇の端から、紅い鮮血が伝い流れる。

女はそれを舌先で舐めとり、自身の血味を確かめてから恍惚と呟いた。




「やっぱりあなた、最高よ」
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