裏僕小説その4
□カデンツァ×エレジー「享楽」
1ページ/2ページ
「ねえカデンツァ、退屈で死んじゃいそうなの。相手をしてよ」
男の肩に手を掛け、しなだれかかる女は、濃いメークが施された目許を細め、秋波を送った。
人間の男なら簡単に陥落する艶に溢れた美貌も、目の前の男には通用しないことを知っている女は、予想していた通りの冷淡な反応につまらなそうに鼻を鳴らした。
「お前では俺の相手に不足だと、以前云った筈だが」
「やあね〜、私を満足させて欲しいのよ。今、私が何を求めているか解らない、なんて不粋なコトは云わないでしょう?」
男の髪を耳に掛け、紅蓮の長い毛先を指先に絡ませて食い下がる。
「………」
猫の様な撫で声と、鋭さの混じる色目に、カデンツァはエレジーの柳腰を引き寄せた。
相手がその気になったと見るや、エレジーは口角を上げてカデンツァの項に両腕を絡ませる。
「セックスは人間だけの嗜みじゃないでしょう?女体の私は最高よ、試してみて」
腰をくねらせカデンツァの下腹部に擦り付け、ルージュの艶を帯びた唇を近付ける。
男は顔を寄せ……鋭利な二本の牙で女の唇に噛み付いた。
「…っ!」
エレジーの唇の端から、紅い鮮血が伝い流れる。
女はそれを舌先で舐めとり、自身の血味を確かめてから恍惚と呟いた。
「やっぱりあなた、最高よ」