裏僕小説その4
□夕月×エレジー(女)「幻想」
1ページ/3ページ
「つまらないわね。ナニか刺激的なコトが欲しいわ」
悩ましげな吐息を吐き、エレジーは誘うように目許を細めた。
「ねえカデンツァ、相手をしてくれない?」
長くしなやかな脚を組めば、軍服の裾から覗く磁器の肌が男の肉欲をそそる。
「悪いがお前の相手をする趣味は無い。他を当たれ」
だが男は、目の前の、男の欲を具現化した様な女の姿態には目も暮れず、向けられた媚艶の眼差しを一蹴する。
「相変わらず冷たい男ね。私では不足だとでも言いたいのかしら。ああ、そうよね。あなたは悪食の変わり者だもの。あの追っかけまわしている坊やにご執心なのでしょう?」
挑発めいた言葉を投げ掛け、紅いルージュの塗られた唇をつり上げる。
一向に自分を振り向かない男に、エレジーはつまらなそうに鼻を鳴らし、「そういえば」と口許に指先を当てた。
「あなた、神の光に逢ったのよね。あなた好みの可愛い坊や?是非、私もお目に掛かってみたいわ。…ああ、そうだ、神の光と遊ぶのはどうかしら。素敵な暇潰しになりそうじゃない?」
クスクスと嗤い出したエレジーは、新たな遊びを覚えた少女の様にあどけなく、カデンツァに固定された眸は享楽の限りを知り尽くした娼婦の輝きを宿していた。
「ねえ、教えて頂戴。清廉と呼ばれた神の光が、女の前ではどんな雄の貌を魅せるのか。…この手で全て暴いてあげるわ」
男の顎に、白い手袋に隠れた長い指先が掛かる。
不愉快そうに女を映す深紅の眸を見つめ、エレジーは陶然と囁いた。