裏僕小説その4

□焔椎真×九十九「秘め事」
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何度も子を為してきたから手順などは心得ているが、男を抱くなど未体験だ。

あの狭い器官に傷を付けずに挿入出来るのかと思案しながら、焔椎真は九十九のパジャマを剥いでいった。

「くそっ…暗くてよく見えねえな」

「電気点けないでね。恥ずかしいから」

「お前、自分から言い出したくせに恥じらいなんか持つなよ」

と、言いつつ焔椎真も直視出来る勇気はないため、彼の意思を尊重する。

「…キスはないの?」

「それは本当に好きなヤツができた時のためにとっておけ」

「男前だね。焔椎真」

「うるせー。黙ってろ」

窓から射し込む僅かな外灯りを頼りに、胸元に手をかける。

男にしては随分なめらかな質感だと思いながら、脇腹に向かって下げていった。

「ね、胸も触ってよ」

ねだる声で空いた焔椎真の手を胸元に持って行けば、戸惑いながらも胸板を手の平で撫で回した。

「焔椎真の手、大きいね」

「そりゃどーも。…なんか濡らすのねえかな」

きょろきょろと辺りを探ってみるが、行為用のローションなど持ち合わせてはいないし、代替品もすぐには思いつかなかった。

「大丈夫。初めは自分でするから」

九十九は軽く膝を立てて足を開き、自分の指を口に含んで湿らせると、腕を伸ばして臀部の奥に滑らせた。

「…っ…ん」

「おっ、おい…」

僅かな苦痛を漏らしながら、九十九は蕾に指を差し入れ入口を広げる。

心配そうに、しかし扇情的なものを眺めるように見守る焔椎真の手を引き、準備の整った自らの蕾に導いた。

「このまま指を入れて」

指で双丘を割り、小さく息づく蕾を見つけ出すと、焔椎真は湿ったそこに指先を埋めた。

指一本でもきつく収縮する体内は、独特の熱感と湿潤さをもっている。

「痛かったら言えよ」

普段の彼らしからぬ繊細な指使いで、ゆっくりと円を描きながら奥に進む。

「あっ…っそこ…」

「ここが感じるのか?」

小さなしこりのように顔を出したそこを指の腹で押すと、九十九の身体が弓なりに跳ねる。

「ねえ…っ、もう平気だから挿れてよ。焔椎真の、さっきから我慢出来ないって当たってるよ」

「っうるせーな。生理現象だ!」

スウェット越しに盛り上がった自身を指摘され、焔椎真は照れ隠しに悪態を吐いた。

九十九の、昼間の彼からは想像も出来ない痴態に当てられるようにして、焔椎真自身もじわじわと雄の感覚が滲み出るのを感じていた。

脚を開いて待つ九十九の視線を感じながら、下着の中から勃起した自身を取り出す。

すると、上半身をおもむろに起こした九十九が、焔椎真のものと自分のとを見比べて、ぼそりと呟いた。

「焔椎真の方が、俺よりも大きい…」

「ばっ…!!まじまじ見てんじゃねーよ!」

ぼすっと胸を押して乱暴に寝かせると、焔椎真は自分を落ち着けるように深呼吸を繰り返した。

「じゃ、挿れるぞ」

割れ目に指を宛がい蕾の位置を確かめると、焦点を定めて自身の先を押し当てる。

先端が熱い蜜場に包まれる心地に、焔椎真は大きく息を吐いた。

「ほ…つま」

腕を掴まれ、前に引き倒される。

焔椎真よりはいくらか細い腕に抱き締められ、小さな息遣いも耳元に感じた。

「ね、気持ちいい?俺のなか…」

「…ああ。辛くないか」

「ふふっ。いつもそれくらい優しかったらいいのにね」

気さくな友人から、一夜の濃密な関係へ。

自分たちはそれほど密やかな囁きが出来たのかと、驚きと共に相手の新たな一面が覗かれる。

狭小な器官は快感に導かれるようにして襞を広げ、男の形を包み込む。

「もっと中、擦って。たくさん突いていいから」

焔椎真の硬質な質感の髪に手を入れ、九十九は僅かに腰を引いて、また前面に突き出し、誘いをかけた。

「っ…ばかやろ…動くなよっ」

体内の蠢きにつられて埋まった自身が押し上げられ、男の快感が高まる。

本能に従って腰を遣えば、ベッドが揺らいだ。

「んっ、気持ち…いい、焔椎真。ねえ、好きって言ってよ」

背中に回っていた片方の腕を乳首に当て、九十九は抽送と連動するように指で弄り出す。

「言えるかっ…お前への好きは、あくまで友人の好きだ…!」

「…ケチだね。そんなトコも、好きなんだけど」

坦々と、しかし奥を突く焔椎真の動きは九十九に強い快感を与え、相手を求める声量も大きなものに変化していった。

もっと乱暴にとせがんでも、彼はきっと制御する。

野性的な見た目に反して相手を思いやる焔椎真に、九十九は切ない笑みを零した。

「…?なに笑ってんだよ」

「べつに。…一緒にイこうよ。中に出していいから」

「馬鹿、んなこと言うな…っ」

表情に余裕のなくなった焔椎真の顔を引き寄せ、キスの手前で囁いた。

「ありがと」

九十九が腰を動かせば、焔椎真も同じリズムで中を突き、何度目かの抽送の後に焔椎真が小さく唸った。

熱く注がれた液体に目を細め、九十九は腹の上に飛沫を飛び散らせる。


自身を引き抜きベッドの上に寝そべった焔椎真は、ティッシュの箱を九十九に投げつけた。

「ちゃんと出しとけよ」

九十九がすり寄って二の腕を抱きしめても、焔椎真は文句を言わずにじっとしていた。

「このまま眠ってもいい?」

「…好きにしろ」





パートナーと離れた僅かな孤独を埋める。

その一時の偽りの安らぎが終わった。

明日には何事もなく日常に戻る。

それは戒めの手の、一夜限りの秘め事だった。
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