紹介

□期待のち飴
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期待のち


六月の第三日曜日


この日は全国のお父さん方が期待するんじゃないかと俺は思っている
そして四児の娘、息子を持つ俺も期待している


多分大丈夫だと思う


紫姫と藍都はまだ高校生だし…
実姫と実都はもう大人と言っても良いぐらいの年だけど、俺は期待する



とか、そんな事考えながらも日曜出勤
日曜こそお店に来てゆっくりしてもらいたいし、俺自体もこの店が好きだからあまり休みたくない
まぁ、遊姫さんに一日ぐらい休んで。と言われたから休むけど
実姫さんには逆らえない


カランコロン


愉快な音を立てて店のドアが開く


「こんにちわー」

「こんにちわ、いらっしゃい」

「相変わらず雰囲気(が)ダンディーですね―」


来店したのはお得意さん。名前は恵(ケイ)ちゃん
近くの大学に通う女子大生。確か美術の専門だった…かな?



「あ、今日はカフェオレお願いしても良いですか?」

「OK,カフェオレね。恵ちゃんがカフェオレ頼むなんて珍しいね、いつもコーヒーなのに」

「今日はちょっと、にがーい経験をしたので」


そのにがーい経験とやらを思い出したのか、苦虫を噛み潰したような顔をする
噛み潰したであってるのかな?


「何があったの?」

「実は……」



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一通り恵ちゃんの愚痴を聞くと、すっきりしたのかカフェオレのおかわりを頂く
愚痴を聞く限り、愚痴だけで終わらせられるような内容じゃなかったので、おまけでスコーンもつけてあげる
あまり甘くないからカフェオレでも大丈夫だろう
それにしても、最近の大学生は苦労しているな
実都は大丈夫なのだろうか?
いや、まぁ、実都だから大丈夫か?のらりくらりと生きているからな
我が息子ながら上手く生きている様な気がする
勿論、実姫や紫姫、藍都もだけど


子供自慢ですが何か?



「スコーンは初めて食べるんですけど、スコーンも美味しいですね♪」

「そう?そう言ってもらえると嬉しいよ」

「…あ、そう言えば、今日って確か父の日でしたよねー」

「恵ちゃんはお父さんとかに何かあげたりするの?」

「実は、もう実家の方に宅配で送ってるんですけど…ペアの海外旅行券と恥ずかしながら自分のバラのデッサン画を…」


恥ずかしそうに、手に持っているスコーンをいじりながら恵ちゃんは言う
恵ちゃんのご両親はとても素敵なお子さんを持ちましたね
旅行券とかもらったらそれは嬉しい
デッサン画も、普通なら作品とかはコンクールに出して家には帰ってこないって事があるから、もらえるのは嬉しいだろうね。
まぁ、子供からの物だったら何でも嬉しいけどね、俺は


「そっか、ご両親は今頃嬉しいだろうね」

「喜んでもらえたら嬉しいんですけどね…二人とも海外は初めてなんでそこは心配だけど…」

「ははっ、海外は…大丈夫でしょ、多分。子供からもらったものは親は何でも嬉しいから大丈夫だよ」

「そう言うもんなんですか?」

「そう言うもんなんです」

「そっか―…あ、魁都さんって確かお子さんいましたよね?」

「四人いるよ。男女二人ずつ」

「期待、してます?」


「そりゃもう、バリバリ?」


少し茶目っけ効かして言うと、なぜか爆笑する恵ちゃん
そんなに可笑しかったかな?


「比較的真面目な人がこんなことすると面白いんですよ」


さいですか


「っと、ご馳走さま―。いつものことながら美味しかったです」

「お粗末さまでした」

「じゃっ、明後日も来ますねー」

「またいらっしゃい。次はコーヒーとカフェオレ以外のを頼んでくれると嬉しいな」

「…えっとーじゃあ…アイスココアと今日のスコーンでっ!!」

「ふふっ、OK」

「あぁ、もうっ!相変わらず雰囲気(が)ダンディーですねっ!!!!いや、今のは可愛いなのか?」


なんとなく酷い事言われてるのは感じ取れるよ



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カランコロン


恵ちゃんがお店から出て行って、ほんの数分
また愉快な音を立てて恵ちゃんが来店してきた
どうしたんだろうか?



「魁都さーん、愛されてますね―」


そう言って渡されたのは大きな箱



中に入っていたのは、小さなバラの花束と黒色の(多分)天然石のブレスレット、店のロゴが入った、手作りだと分かる黒色のエプロン、黒のマグカップ、黒を基調とした写真立て、可愛らしいフクロウが描かれたもの…そして箱の底にはいろいろな言葉が…
パパ様いつもありがとう」「早く帰ってこい」「今日のご飯どうしましょう?」「モウガッコウヤメタイ」「家に行くと美味しいコーヒー、ありがとうございます。こんなものですみません」「いつも悩みなど聞いてくれてありがとうございます」「早く結婚しなきゃだね((笑」の文字
なんだろうか、涙が出てきそうだ
特に結婚の文字に



「これ、さっき女の子三人組に渡されたんですよ〜。渡して下さい、って」


「そう、嬉しくて涙が出そうだよ」

「ははっ、私の目の前で泣かないでくださいよ?」

「泣かないよ。あぁ、そうだ、恵ちゃん、俺さぁ、もう少しで二人の子供出来ると思う」

「……………リアジュボーン」

「謎の言葉を言わないで」


まぁ、理解できたことに俺は吃驚だよ








11本のバラは最愛


1本のバラは一目惚れ


赤バラは愛情


白バラは私はあなたにふさわしい


--------family--------
バラは遊姫さん、天然石は藍都、エプロンは実姫と紫姫、マグカップは秋良、写真立ては実都、は百佳です。
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