紹介

□いとも簡単に
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いとも簡単に


偶に、この子を見ていると悲しくなることがある
偶然出会った
この少女、紫姫を見ていると


初めて会ったときに紫姫から名前をもらった
聞かれたときに教えなかったのではなく、教えられなかった名前
俺は忘れている
何もかも


名前も、どうやって死んだのかも、生前の記憶も、何もかも


唯一分かるのはこの街で死んだこと
目を覚ますと(幽霊だから目を覚ますって言うのもどこか可笑しいけど)この街にいたから。
多分そうなんだと思う
あと、幽霊は何もかもが見えると言う事
頭の中も壁の向こうも何もかも。
それに、幽霊の先輩達に聞いてみると、幽霊はやっぱり死んだときと同じ年齢なんだって
だから多分だろうけど俺は20代前半だと思うんだ
多分
紫姫に見た目何歳か聞いたらそう言われたから


二十代の時に死ぬとか、俺に何があったのか気になるのは当然で


お友達に協力してもらって探していたりする
勿論、多分心配するだろう紫姫には内緒で


「んー…なんか最近のレイさんって可笑しいよね」


手を狐の形にして言う。最後にはコンっと可愛らしい声も出す


『そうかな?』

「うん、なんか、どこか…よそよそしい感じがする」

『よそよそしいねぇー』

「んー、レイさん、あんたなんか隠してるでしょ?」


しれっとした顔でピンポイントで図星を貫くのは女だからなのかな?
でもこれは君には言えないな―
とか言いながら俺は言っちゃうんだろうなー
どこか近い未来を見ながらそう思う


『隠してるよ』

「あ、やっぱそうなんだ…で?教えてくれたりは?」

『だーめ。おしえないよーだ』

「うわ、何それキモイ」

『ちょっ、それは流石にレイさん傷ついちゃうよ?』

「じゃァ教えて?」

『だーめだってば。秘密なのよ。でも、まぁ…いつかは話すときが来ると思うよ?』

「えー…じゃぁ、絶対話してよ?」

『おう』

「じゃっ、ほら、小指出して」


そう言いながら紫姫が右手の小指を出してくる
何をするかはすぐ分かったけど、ふと見えた醜いもので気分が削がれる


「レイさん?」

『…ぁ、うん』

「はい、じゃー、ゆびきりげーんまーん、嘘ついたらハリセンボンのーます、指切ったっ!!!!」


勢いよく小指を話すその時、その醜いものが揺れる


あはっ、俺はまだまだ子供みたいなだ


『紫姫、ちょっと手、貸して』

「ん?」



プツン


約束を守ったら結びなおすから、
だから俺の記憶が戻るまでは俺だけのものになってね?



それはいとも簡単に千切れるい糸

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7・26は幽霊の日
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