私は君を忘れない
□クロース-エンカウンター
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「どうだ?ルカ、今度のマニューバーは。」
「スプリットSからトリプルループに急反転上昇、これなら行けますね。」
ルカがノートパソコンを叩きながら、EXギアを着けて演習をするミシェルに答える。
「くだらねぇ。俺なら5回は回れるな。」
アルトがシェリルのポスターで紙飛行機を折りながら文句を言った。
「リハーサルで銀河の妖精にアマチュア扱いされたのがそんなに不服か?」
「俺はいつでも全快で飛びたいだけだ。」
「それで事故って観客に怪我でもさせたら誰が責任を取るのかなぁ?」
「俺はそんなへまはしない。」
ゴチン!
そんなことを言ってのけるアルトの頭の上に拳骨が落ちた。
「何すんだよ!いってぇな名無しさん!」
『なにって、アルトがバカなこと言ってるからでしょうが!』
「にしたって、お前の拳骨は痛すぎんだよ!なんて力なんだよ!」
『悪かったわねぇ!あんたの演じてたようなか弱い女じゃなくて!お ひ め さ ま!』
「っ!今なんつった!!!!」
「なぁーにおこってんだ?天才女形(おやま)のアルト姫?」
名無しさんが付けた火にミシェルが油を注ぐ。
「ミハエルっ、てめぇーなぁ!」
そしてその火はなぜか一方的にミシェルに向かい、二人は取っ組み合いを始めてしまった。
「あぁ〜、また始まっちゃった。」
ため息混じりにルカが言うと名無しさんはその隣へと歩みよる。
『ホントだね。懲りないやつらだね!』
「ああしたきっかけは名無しさん先輩じゃないですか。」
『ぅん?そぅだっけ?』
そういって、笑いながら取っ組み合いをいまだに続ける二人を見る。
「あっ!来ました!銀河の妖精!」
そんな空気を破ったのはルカのこの一言だった。
どうやら、銀河の妖精こと、シェリル-ノームがついにこのフロンティアに到着したようだ。
ルカの周りにどわっと男子たちがわく。
気がつくと、ミシェルもいた。シェリルの来艦によって取っ組み合いは終止符が着いたようだ。
アルトはというと、さっきよりも増してさらに不満そうな顔で紙飛行機を折り続ける。
『アールト』
「なんだよ。」
『なぁーに寂しそうにしちゃってるの?シェリル-ノームにミシェルを取られて寂しいのかしら?』
「誰がだよ。ったく、銀河の妖精 妖精ってみんな浮き足立ちあがって。
いっけぇぇぇ!」
アルトが折りたての紙飛行機をミシェルたちのいる方へと投げる
「!伏せろ!!」
そのまま紙飛行機は飛んでいき、上昇気流に乗っかっていった。
「アルト!お前!」
怒声を放つミシェルを完全に無視してアルトは風を読む。
「北北西の風。秒速4メートル。
ランチャーカタパルト接続。エンジン良し。
テイクオフ!!」
言うが早いか空へとアルトが飛び立つ。
「風に乗った!!」
「ったく、歌舞伎上がりのクセに。」
『まぁまぁミシェル。それにしても気持ち良さそうに飛ぶよねぇ、平和な空をさ。』
「平和な空 ねぇ。」
ふとミシェルが名無しさんの顔を盗み見れば、どこか寂しそうな顔が空を生き生きと飛び回るアルトを見つめていた。