BLOOD BLOOD
□chapter.1
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SIDE:Syu
それは、余りにも突然だった。
今日もいつも通り、サボろうと音楽室へ向かったけど、珍しく授業が行われていて仕方なく屋上へ向かっていたときだ。
「これは...歌?」
微かに聞こえて来る歌のような音に、屋上には人がいると知れた。
いつもなら人がいると音楽室へと帰るはずが、今日は生憎空いていない。
それに加え、今日の俺の気分はいいらしい。
そんなことも気にせず、重い扉を開いた。
扉を開くと、歌は一段とはっきり聞こえるようになった。
よく聞くと歌に歌詞は無く、鼻歌のように音を奏でているだけだ。
へぇ、低俗な人間の割には、いい歌を歌うんだな。
「あら、"低俗な人間の割には"とは、ひどいんじゃないかしら」
気付けば歌は止んでいて、鼻歌を紡いでいたその口は、俺に向いていた。
...というより、なんで俺の思ったことがわかったんだ?
「驚いているのね。別にエスパーなわけではないわ。あなたが無意識かもしれないけど口にしていたのよ」
「ま、どうでもいいけど...」
それもそうねと、目の前にいる女はうっすらと笑みを浮かべた。
女の見た目は、黒いまっすぐ伸びた髪に、銀色の切れ目がちな瞳。
気品のある言葉遣いが特徴的だ。
「さて、人も来たことだし...わたしは戻りますか。...あなたも、早く行かないと授業遅れますよ?」
「余計なお世話だ。あんたに関係ないだろ?」
女は、苦笑いを最後に、扉へと姿をてしまった。
「何なんだよ...まったく」
あぁ、ほんとにイライラする。
でも...
「あの歌の曲名だけは聞いとけばよかったな...」
あの歌はまた聞きたいと、素直にそう思った。