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□風邪2
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「やっぱり、うつしちまったな・・・悪い」
「エリックのせいじゃないさ・・・それに、その・・・君にうつされたのなら、悪い気はしない」
アランが僅かに笑ってみせると、
「あー・・・俺は最低な男だ」
そう言って、エリックは天井を仰いだ。
「エリック?」
アランが瞬きして、エリックを見ると、エリックはガリガリと頭を掻いた。
「最低な男だよ、俺は・・・お前が、熱で苦しんでいるってのに、その風邪を移したのが、俺なんだと思うと嬉しく思っちまう」
指の背で、アランの目元を撫でる。
「やっぱり、今日も休む」
「駄目だよ。昨日の午後だって無理やり休んだだろ?おれは寝てれば治るんだから」
エリックは昨日の午後、体調を崩したアランを心配して一緒に半日休みを取り、一晩看病してくれたのだ。
それに、明日は元からエリックの休みが入っている。
これ以上休ませるわけにはいかない。
「けど・・・」
「大丈夫だよ。ほら、早く行かないと遅刻するぞ?エリック、おれは、働いている君の姿が好きだよ」
「アラン・・・そんな風に言われたら、仕事行かないわけにはいかない」
エリックは、困ったように笑う。
「早く仕事に行って、早く帰って来て・・・待っているから」
「わかった。それじゃ、いい子で待ってろよ」
「いい子って、おれは子どもじゃな・・・っん」
起き上がって、抗議しようとするアランに、エリックは腰を屈めて素早く口づけた。
「そうだな。俺も子ども相手に、こんなことしない」
「エリック!」
赤くなったアランの耳元に囁く。
「続きは、お前の風邪が治ってからにしようぜ」
髪を、さら、と撫で、いってくる、と言葉を残し、エリックは部屋を出て行った。
「ああ・・・もうっ・・・あんなことされたら眠れないじゃないか」
エリックの出て行ったドアに向かって文句を言い、ポフンと柔らかな枕に頭を預ける。
エリックの触れた唇に指先で触れる。
わずかに、ぬくもりが残っているような気がした。
「早く帰って来ないかな・・・エリック」
今、出て行ったばかりのエリックに想いを馳せる。
「って・・・ばかじゃないのか?おれは!」
こんな風に、思ってしまうのは、きっと風邪のせいだ。
アランは、眠るべく、ぎゅっと目を閉じた。