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□eyes
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死神の瞳の色は、総じて黄緑色だ。
けれど、全く同じ黄緑色ではないと言うことに最近気がついた。

「鏡とにらめっこして、どうしたアラン?吹き出物でもできたか」

シャワーを浴び終えたエリックが、髪を拭きながらやってきた。

「ああ、エリック・・・いや、そうじゃなくて、眼を見てたんだ」
「眼?痛いのか?」

心配そうな顔でこちらを見る。

「眼が痛いんじゃなくて・・・眼の色って、皆、微妙に違うよな、って思って」
「んー?そうか?俺達、死神は皆、黄緑色だろ?」
「そうなんだけど、でもほら、エリック、見て」

隣に並んだエリックと共に鏡を覗き込む。

「おれより、エリックの方が明るい」
「あー・・・言われてみると、確かに。髪の色のせいか?」
「そうかも・・・ロナルドも明るいんだよな」

何気無いアランの言葉に、エリックが反応する。

「おい、アラン」
「ん?」
「なーんーで、ロナルドの瞳の色まで知ってる?」

そんなに顔近づけるような事したのか

地を這うような、低い声

マズイ・・・
アランは、背中に嫌な汗が伝うのを感じた。

「いや!ほら、ロナルドって頼み事するとき、妙に近づいくるじゃないか。だから、その時、たまたま」
「じゃあ、そん時、瞳の色に気がついた、と」

エリックは鼻を鳴らした。

「いずれにせよ、面白い話じゃねぇな」
「ちが・・・っ。誤解しないでくれ!おれが、気がついたのは、この間の朝・・・」

そこまで言ってアランの顔が急に真っ赤になった。

「この間の朝が、どうした」
「だ、だから!この間、君が朝っぱらから・・・っ」

アランの言葉に、エリックは、ようやく、思い出したようだ。

「ああ!あの朝な!あの時、妙にお前が色っぽくて・・・なるほどな。明るいトコでしたの初めてだもんな。
で、そん時気がついた、と」
「そ、そうだよ!」

明るい日差しの中、初めて間近でエリックの瞳を見た。
その時、気がついたのだ。自分との瞳の色の相違に。

いつも、薄く色づいた眼鏡に隠れていたり、眼鏡を外していても暗い場所でしか見た事がなかったので、
気がつかなかったのだ。

あの時、芽吹いたばかりの若葉のような色に、目を奪われた。

それから、他の死神たちの瞳の色が気になりはじめ、たまたま接近してきたロナルドの瞳の色を確認しただけなのだ。

アランは、両方の掌でエリックの頬を包み親指の腹で瞳の下をなぞった。

自分とは違う、若葉色の瞳。

「綺麗な色だ・・・羨ましいな」
「この眼はお前のもんだ・・・アラン。眼だけじゃなく、俺の全てが」
「・・・エリック」
「それとな、俺は、お前の瞳の色が好きだ。見ていると落ち着く・・・だから、誰にも渡さねぇ」

アランの細い顎を掬い上げ、

「覚悟しろよ?」

唇が重なる寸前、そう囁き、口づけた。

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