書庫

□昼と夜
1ページ/2ページ

職場恋愛って・・・大変だ。

最初は、好きなひとと同じ職場っていいな、と思っていた。

単純に、いつも一緒にいることができるから。

けれど、意外と付き合っているのがバレないようにするのが、大変だと気づいた。

それに、側にいるのに、必要以上に話したり、触れたりできない。

それが、少しもどかしい。


使った資料の山を抱え、廊下を歩いていると、少し持ちすぎたせいか、山が崩れてきた。

「よっ、と」
「半分持ってやるよ」

立ち止まって、バランスを取っていると、声が掛けられ、同時に腕から重さが半分程減った。
いつの間にか、エリックが隣に来ていて、資料を持ってくれたのだ。

「エリック、さん・・・ありがとうございます」
「資料室に運べばいいのか?」
「はい。お願いします」

資料室に二人で向かい、手分けして、資料を仕舞っていると、
背後からエリックに抱き締められた。

手に持っていたファイルがバサッと落ちる。

「ちょっ、エリック・・・離して」
「誰もいない」
「だからって!いつ誰がくるかわからな、」
「少し、黙ってろ」
「ん、っ」

顎を捕らえられ、少し苦しい体勢で、口づけられる。

「はっ・・・ぁ」

ツ、と銀糸が伝い、途切れる。

「もう!誰がくるかわからないのに」
「仕方がないだろう?同じ職場にいて、顔を見て、話だってしてるのに、触れない・・・これって何の拷問だ?」
「拷問、って・・・仕方ないだろ。職場なんだし。俺だって・・・」

そこで、ハッとしたようにアランが口を噤んだが、それを見逃すエリックではない。

「俺だって・・・の続きは?」

身体の向きが変えられ、正面から、見つめられる。
熱い眼差しから、逃れるように、瞳を伏せながら、小声で言う。

「俺だって・・・我慢、してるんだから」
「なら、問題ないな」

背後の書架に両手をつき、その腕でアランを逃さぬように囲う。

「・・・アラン」

名を呼んで、口づける。
舌先で唇をノックするように、突いて、
僅かに出来た隙間から舌を滑り込ませ、歯列をなぞり、
上顎をくすぐり、奥に引っ込んだ舌を絡め取ると強めに吸った。

「ん、んんっ」

頭の奥がジンとしてきて、だんだん理性が利かなくなってくる。

このままだと流されてしまう・・・。

アランは、掌に爪を立てた。

飲み込みきれなかった唾液が顎を伝い落ちる。

エリックの唇が移動して、耳の下の柔らかな部分を軽く吸われる。

「・・・ッ」

ぴくっと、アランは肩を震わせ、ギュッと眼を閉じた。

けれど、エリックがそれ以上何もしてこないのに気がつき、そっと瞼を開けると、
アランと視線が合ったエリックが、フッと笑った。

「エリック?あの・・・」
「しねぇよ。お前が嫌がる事はしない。それに、するなら、落ち着いた場所でしたいしな・・・だから、今は」

これで我慢しとく

掠めるように口づけ、アランから離れた。

「先に戻ってる。お前は、もう少ししてから戻ってこいよ・・・頬、真っ赤だから」

エリックは自分の頬をつつきながら、そう言って、資料室を出て行った。

「だ、誰のせいだと思って!」

閉まった扉に文句を言って、アランは、指先で指摘された頬に触れてみた。

確かに、触れた頬は熱かった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ