書庫
□満ちる夜
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付き合う、って・・・こういうものなんだろうか
両想いになってから、一緒に食事をしたり、買い物もしたりしているけれど、
これまでもしてきたので、デートという気はしない。
この間、ようやく口づけはしたけれど・・・。
何か思っていたのと違う気がする。
もちろん自分達は男同士なので、普通の恋人同士とは違うのかも知れないが。
「ん?」
そこで、おれはあることに気がついた。
「男同士、って・・・口づけの先もあるのか?」
いや、あるはずだ・・・けど・・・どうやるんだ?
男の自分に相手を受け入れる器官なんて、ない。
エリックも、たぶん、男と付き合った事はないはずだ。
となると・・・
「大変だ・・・調べないと」
いつかくるその日の為に。
翌日、仕事が終わり、エリックの一緒に食事を、という誘いを断って、
おれは書店に向かった。地元ではなく、わざわざ隣町まで足を延ばした。
その手の本はどこにあるだろう。
大抵は奥の方だろうとあたりをつけて、おれは足早に向かった。
「あった。これだ」
目的の本を見つけたおれは、キョロキョロ周囲を見渡し、それを手に取ると、パラパラと捲った。
「う、わ・・・っ」
おれは思わず手で口元を覆った。
そして、反射的に本を棚に戻して、その場から逃げるように足早に去った。
家に帰っても、動悸がおさまらなかった。
「ほ、本当にあんなコト・・・エリックとおれが・・・ッ」
本に描かれていたイラストが、自分とエリックとなって脳内に再生され、
恥ずかしくて、傍らのクッションを抱き締め、顔を埋めた。